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おめで鯛

御菓子あれこれ

鯛の打ち菓子

 菓子屋を営んでおりますと様々なお客様のご要望がございます。先日お受けした注文仕事についてのあれやこれやです。平成・令和世代の人には目新しい、昭和世代の人にとってはそれはそれは昔懐かしい「打ち菓子」の折詰引き物注文を賜りました。松・竹・梅・鶴・亀・海老・おめで鯛、折詰にするとそれはそれは豪華なものです。弊社では餡入りの打ち菓子をお盆とお彼岸の時期限定で製造しております。しかしながら慶弔の折詰引菓子として最後に注文をお受けしたのは?…かなり前のことです。

 そんな日常を送っていたところ「鯛の打ち菓子」をどうしても作って下さいとのご依頼がありました。大きさはお任せされたので、発送の都合上生菓子6個入りの箱ピッタリの大きさ、仕上がるとなかなかの迫力と美しさです。お客様のお話を伺いますと北海道在住の祖父母に送ってあげたいとのこと。先方様が昔たべた味わいが忘れられない、どうしても食べたいというのがその理由でした。現在ではなかなか出番が少なく控えにまわっているこの分野のお菓子に一体どの様な魅力があるのだろうか?と、しばし思案。

 そこで70歳~80歳代のお客様に何気なく聞いてみたところ「昔(昭和の前半から中盤頃でしょうか)はこういうお菓子が慶弔の引き物で、いただくとみんなで喜んでたべたもんだよ、美味しかったなあ」との声が多数。日本の高度成長期を支えてきた年代の方々のエネルギー源の一つ?として役立っていたのかと妙に納得しました。今の時代ですとカロリーが・・・だとか砂糖の量が・・・だとか考えると手が遠のきがちです。かくゆう私も製造中に〝はたしてこの鯛一匹のカロリーを消費するのにロードバイクで何キロ走れば・・・〟などとうかつにも思ったりしてしまいました。そんな心配ごとは一匹を幾人かで分けて食べれば何の問題でもないのですけれどね。製造販売者がこんな事を言っていたのではいけませんね、反省。

 さてさて、このお菓子の魅力、それは砂糖や寒梅粉をふんだんに使っているその贅沢さ、木型の持つ造形美・縁起物・歴史等々の物語性、それに菓子職人の技術が相重なり生み出されたものだと思います。これは和菓子全体の魅力の一つでもあります。

 和菓子の文化は日本の食文化そのものでもあります。和菓子は食べる宝石、見て楽し食べて美味し、思い出してはまた楽しです。和菓子の歴史そのものが大きな日本文化の物語でもあり、それを継承・伝承してきた先人たちに敬意をはらいつつ伝統を受け継ぎ後世に伝えることに誇りを持ちつつ、日々精進していこうと思います。「菓子は一生勉強だよ」と偉い先輩方に昔言われたことがなんとなくわかるようになってきた今日この頃です。

 群馬県菓子技能士会会長・惠後原勝

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