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「怠ける権利」で売上向上

従業員の給与、やる気アップも可能

若月正章氏

 鳥取県菓子工業組合が3月9日、鳥取市尚徳町のとりぎん文化会館第3会議室において、公開講座「怠ける権利(働き方改革)」を開催した。

 鳥取県菓子工業組合では、組合のことを広く知ってもらう目的で公開講座を開催しており今回、大妻女子大学(東京都多摩市)教授で鳥取市出身の社会学者、小谷敏氏と、前・静岡県菓子工業組合理事長で㈲わかつき(静岡県富士市)代表の若月正章氏を講師に招いた。

 今回のテーマは、過剰労働が常態化する日本社会で〝健康で文化的な最低限度の生活を営む権利=怠ける権利〟と説いた小谷教授の著書『怠ける権利!』(高文研)からとったもの。

 まず小谷教授が、学校現場の長時間労働、運送業の2024年問題、過労死問題など、本を書いたきっかけについて触れ、「日本社会全体が、過剰労働で賄われ、それを前提に成り立っているといういびつな構造になっている」と話した。

小谷敏氏

 さらに、本来その過剰労働を緩和してくれるはずの様々な技術革新が、かえって手間を増やし、労働者の余裕を奪っていると主張。

 「社会学者ヴェブレンが『発明は必要の母である』と揶揄したように、自動車が発明されたら運転技術を習得する必要が、IT化が進んだらアプリを使いこなす必要が生まれる」と小谷教授。

 また、「例えば鹿児島から福岡への出張は、新幹線開通前なら仕事終わりに天神や中州で遊んで1泊して帰っていて、それが仕事の活力にもなっていた。日帰りできるようになって便利にはなったが、疲れて家に帰った翌日、またハードに働かないといけなくなった」と、無駄が省かれ効率化が進んだ結果、非常に窮屈で面白みのない労働環境になっているとも。

 一方で、小谷教授の著書を読み、業界の常識を覆す〝怠け者〟経営を実践、売上を伸ばしたのが、若月代表の経営する和菓子製造・販売の㈲わかつき(ひっきりなしに客の訪れる地域一番店)。

 「三代目として、年中無休、朝早くから夜遅くまで仕事をするのが常識という中で育ち、自分の代になってからもそれを良しとしていた」と若月代表。

 継いだ後に始めた菓子製造を軌道に乗せ、静岡県菓子工業組合の役員を経て理事長に就任。その際、ある思いから、就任中は「自社の商売を伸ばす」「心身ともに健康な状態で次の人に役を譲る」という2つを宣言。

 その頃に読んだのが『怠ける権利!』で、その内容に感銘を受けた若月代表は、週一回の定休日設定を皮切りに段階的に営業日を減らし、最終的に年間約100日の休日を実現させた。

 「これまでは頑張った方が売り上げに繋がると思っていたので、不安はありましたが、蓋を開けてみたら8年間で売上が5割アップ。従業員の給与増、やる気向上という良いサイクルが生まれました」と若月代表。

 2人の話の後には、会場の参加者との質疑応答が行われ、「怠ける権利」についてさらに深掘りする議論が繰り広げられた。

 鳥取県菓子工業組合・事務局

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