目標こそが近道!
菓子ほど個性を出せる商売はない
映画好きを自称する私。数多の映画も世に出て評価を得ているものには「テーマ」がしっかりしている。
作り手が思い願うものを2、3時間で観る側(お客様)に伝える。そうして多くの人の心に感動を与える作品が名作となる。
私たちの菓子にも同じことがいえると思う。
職人が創造し作り、お客様が口に運んだ瞬間「うまい!」と唸らせることは大好きな映画にも勝るのかもしれない。
だが、映画も菓子もそのモノだけで伝わるのではなく、映画であれば題名、音楽、キャッチフレーズ、劇場の雰囲気にPRやポスターなど取り巻く複合的なものによって形となす。
菓子もおいしさだけではなく、その商品が目指しているテーマ、名前、パッケージに栞、袋や店構えなどこれまた複合的な終結があってこそ、後世に残せるものとなる。
2011年3月JR博多駅が新装される際「駅も新しくなり人も街も変化するときに福岡博多に新しいお土産品を作ろう!」と福岡市和菓子組合の研究会メンバーで考案した「博多カステラ」。
「新しいお土産」というコンセプトテーマを元に弊社ではアレンジを重ね12年間の間に10種類以上のバージョンを絞り出した。
昨年10月にJR西日本と提携し販売開始した「みるく&発酵バター味」はドクターイエローのパッケージも相まって博多駅の新幹線関連の販売場所を皮切りに、ECサイトやふるさと納税返礼品など弊社自社店舗を含め18か所ほどでの販売となり、その勢いは新幹線並み(笑)となっている。
それに先駆け機械導入や工場増築など設備投資はかかったがすべては「新しいお土産」という目標に向かう為の手順と思っている。
もちろん商品の中には「お土産」ではなく「自分ご褒美」的な季節菓子も多い。福岡の和菓子店舗の多数が生菓子製造を営むところだ。そういった商品も「日常使いの和菓子」という目標やコンセプトがしっかりしているので市場(マーケット)としてあり続ける。それぞれの商品の生い立ちから進むべき未来への近道は目標を持った開発だと思っている。
この業界に入って45年ほどの月日を過ごしてきたが、これほど個性を出せる商売はないと思っている。私たちが受け継いだ業界を次世代に繋ぐためにも開発の楽しさ、商売の楽しさを伝えるサポートを全国の方々に伝えていきたい。
菓子を通して映画のように感動を与えられる仕事はいつもワクワクするものだ。
福岡県菓子協同組合副理事長・株式会社富貴代表取締役・松本弘樹