各地の菓子店探訪
福島県菓子店の投稿

お菓子の松月堂

ピンチはチャンス

浮城

 本年、1月1日に発生した能登半島沖地震で被災されました多くの方々に心よりお見舞い申し上げます。弊社は現在引退した父、母(今でもたまに手伝ってもらってます)、洋菓子の兄、和菓子の私、販売の妻、従業員10名で運営しております。あれから13年がたちました。東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故により、本社、支店(1店舗)が立ち入り禁止区域に、倉庫一棟が倒壊、倉庫一棟が津波により流出、テナント店舗一店舗が半壊となりました。幸いにも支店一店舗は無事だったため売り場を半分にして、小さな工場を作り営業を再開いたしました。しかし商品の供給には限りがあるため、茨城県のお菓子屋さんから商品を譲ってもらい、包餡機のパーツを預けて弊社の商品を作って頂きました。また、私自身は修行先だった栃木県小山市の菓子店に避難させていただき、修行先で再度働きながら設備を借りて自社製品を作り、車で福島県南相馬市へ運んでいました。その商品を父、母、兄が南相馬市に残り約二年間支店で販売しておりました。

 2013年6月には工場兼仮本店を南相馬市原町区にオープンしました。これを機に私も大変お世話になった修行先から戻り本格的に自社での製造が再開しました。再開にあたり作った商品は(バウムクーヘン)樹望と名付け年輪を復興の歩みに見立てました。オープン初日は私の想像を超えるお客様。数十メートルの行列、入店まで最大45分待ちでした。この時私が尊敬する修行先の会長の言葉を思い出しました。((ピンチはチャンス))震災直後、明日の事さえどうなるかも分からなく、店が再開出来るなんて想像すら出来ませんでした。しかし、ピンチを乗り越えた先には必ずチャンスがあり、挫折をせずに乗り越える事が大変重要です。弊社も再開にあたり事業再開補助金などを活用させていただきその後2019年には本店も再開しました。

松月堂

 能登半島沖地震で被災された方々、決して諦めず頑張りましょう。自分を信じ、仕事を信じましょう。そして、沢山の場所にアンテナを張ってください。この日本という国はとても素晴らしい国です。事業再開の補助や、地域コミュニティ再建の補助などがあったり、これから出てきたりすると思います。これを上手に活用して設備を新しくしましょう。そして、より良い商品を提供することで、人を呼び、お菓子を通して地域の復興に寄与しましょう。まさにピンチはチャンス。

 株式会社松月堂代表取締役・横川裕信