各地の菓子店探訪
福島県菓子店の投稿

~お菓子の未来~

お菓子のさかい

酒井秀樹さん

 「これからは健康志向のお菓子が流行る時代になるんでしょうか」という質問をある会合のなかで投げかけた方がいました。すると講師の方が「残念ながら身体に良いというフレコミで支持された菓子はあまり聞いたことがありません」「お菓子は主食と違って楽しみの為にあるのです」と述べられました。それを聞いて「そうだ!菓子はこころの栄養分なのだ」と思わず膝を打ってしまいました。

 前置きが長くなってしまいました。私のお店は福島県の中通りの南に位置しています。江戸時代には桜谷といわれた風光明媚な故郷です。

 おかげさまで、創業百十一周年を迎えることができました。初代の祖父酒井正治が菓子屋を開業したのは大正二年(1913年)でした。創業菓子は蒸し金つばです。東京小石川で修行をし、海外航路の郵便船で仕事をした人物です。ユニークなのはその時代当地方で初めてシュークリームを創り販売したことです。価格は5銭でした。実家が酒井牛乳店で今で言えば乳業メーカーであったことで牛乳には事欠きませんでした。この初代の進取性には驚かされます。

 残念ながら、初代は私が生まれる前に亡くなっています。その代わりに2代目の父に言われてきたのが「トコトンおいしい菓子を作れ!」ということです。進取の精神とおいしいお菓子をキッチリ遺伝子として組み込むのが私の仕事だと考えてます。

 これからの菓子の未来には様々な変化が予想されます。今後地方の和洋菓子屋はどう舵取りをしていったら良いのか。答えの中に冒頭の「菓子はこころの栄養分」という方向性があるかと思われます。

 ストレスを取り除ける美味しい菓子。家族の風景を楽しくする菓子。幸福を彩る菓子等々。そんなら理想を追い求めて行こうと思います。

 理想を現実にする為に全社員や後継者と共感・共有して行きたいです。

 そのためにも古いやり方やスキルを考え直すことも必要だと思ってます。道を求めて開いていく為に古い捨てることです。全社一丸となって新しく学び続けることが重要です!これからも創業の心「進取の精神」を軸に果敢に菓子創りに挑戦し続ける覚悟です。心を一つにして。

 お菓子のさかい・代表取締役社長・酒井秀樹