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橘菓祭に集う子供たち

菓子業界の伝統的神事

地域を挙げての祭となっている中嶋神社の橘菓祭

 兵庫県但馬の国 豊岡市にある菓祖中嶋神社の例大祭である「橘菓祭」が、四月二十一日に開催されました。本年はお菓子の神様としてお祀りをしている田道間守命千九百五十四年祭の年です。

 中嶋神社では毎年、主祭神 田道間守命の命日に近い四月の第三日曜日に神事を行い、全国各地から製菓関係者が訪れ、御献菓を奉納します。田道間守命のご神徳に感謝が捧げられると共に、菓業発展・招福等が祈願されます。

 ではここで中嶋神社の歴史を見てみましょう。

 中嶋神社は七世紀後半、推古天皇の時代に建てられました。室町時代に建立された本殿は「二間社流造り」という珍しい様式の建物で、これは、室町時代の典型的な神社建築を伝えるものとして、明治四十五年に国宝に指定され、現在は国の重要文化財となっています。

 その昔、第十一代垂仁天皇は、朝鮮新羅の王子であった天日矛の子孫で但馬の国に住む三宅連の祖である田道間守命に年を取らずにいつまでも長生きが出来るという食べ物「非時香菓」を探すように命令され、神や仙人が住むといわれる「常世の国」に旅たち、十年の歳月を掛けて見つけ、持ち帰りました。しかし天皇はその一年ほど前に亡くなっておられ、持ち帰った半分を皇太后に献上され、残りを垂仁天皇の御陵に捧げ、悲しみのあまりに亡くなられたと伝えられています。

神美小学校の皆さんの合唱と演奏よる唱歌田道間守

 その持ち帰った「非時香菓」こそが現在の「橘」であると伝えられ、わが国の菓子のはじまりと言われています。

 田道間守命の墓が、垂仁天皇御陵の池の中に、浮かんでいるように有ることから「中嶋神社」の名の起源となり、田道間守命の子孫にあたる「中嶋の公」が祖先を祀ったのが創立とされています。

 この田道間守命をお祀りしている中嶋神社の春の祭り「橘菓祭」は、菓子業界の伝統的な神事として伝わっているだけでなく、現在では地域にとって無くてはならない春の事業、地元豊岡の祭りとして盛大に伝えられています。

 神事と共に伝えられているその代表的なものが、中嶋神社近くの豊岡市立神美小学校の生徒の皆さんによる文部省唱歌「田道間守」の合唱と伴奏です。

 この文部省唱歌で歌われている田道間守命の生涯を、子供たちの元気な歌声と伴奏によって出身地現在の豊岡市三宅に響き渡っています。春祭り「菓子祭」は、地域の皆さんの交流の場として、住民自らがお世話役となって活躍し、大変喜ばれる事業となっています。お菓子と共に地域に根付くものとしてこれからも伝えられていく事でしょう。きっと垂仁天皇と田道間守命のお二人も仲良く橘の香しい実を召し上がりながら、子供たちの歌声を聞いておられることだろうなと思いを馳せていました。

 兵庫県菓子工業組合事務局長・日崎隆広

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