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伝統に裏打ちされた技術と経営・組合運営

令和5年度兵庫県技能顕功賞表彰式の難波氏(左)と安達氏(右)

 令和5年度兵庫県菓子工業組合から3名の組合員が、兵庫県から表彰されましたので、其々の方の活動とそれに基づく表彰をご紹介させていただきます。

 最初は、兵庫県菓子工業組合常任理事・姫路菓子組合理事の山野浩氏(伊勢屋本店)です。

 元禄年間に創業した伊勢屋本店は、姫路藩の酒井家御用達の菓子司として代々歩んでこられました。代表銘菓「玉椿」の菓銘も姫路藩筆頭家老・河合寸翁公から賜っています。

 酒井家の影響を受けた「茶道のおもてなしの心」を受け継ぎ伝統の心をもって取締役会長としての自社を経営しつつ、菓子工業組合の運営に携わっておられます。歴史の中で認められ、また歴史に裏付けされた経営視点による長年にわたる活動が認められて、令和5年春に兵庫県功労者表彰を受けられました。

 次にご紹介するのが兵庫県菓子工業組合理事・姫路菓子組合副理事長の難波正則氏(御菓子司 橘屋)です。

令和6年新年名刺交換会にて令和5年度受賞表彰者祝い左手から難波氏、山野氏、安達氏

 姫路に於いて製菓技術や工芸菓子を研究するグループ「菓楽会」を牽引する氏は、元は大学の工学部で土木工学を学んだ異色の菓子職人です。社会人として土木工学分野でスタートを切り、「食の人間国宝」(農林水産大臣表彰)表彰を受けられた氏の父が始めた家業の橘屋を継ぐ決心をしたのが30歳の時。「コンクリートの配合から粉の配合へ」と自身の転身ぶりを笑って話す氏は、人一倍の努力家。その理系(?)の視点から作り出される和菓子の数々は、無駄のない美しさと美味しさが魅力。新しい素材への挑戦や地場の素材を取り入れた活動や工芸菓子の研究にも、組合の若手の職人が共に切磋琢磨する「菓楽会」会長として共に学ぶ姿勢を示してくれています。

 第25回全国菓子大博覧会・兵庫に於いても、率先してその成功に努力してくれました。また、2015年にイタリアで開催されたミラノ万博に於いても、上生菓子の実演を行いましたが、その指先が無駄なく生み出す日本の伝統美、伝統の味を伝えてくれる和菓子の数々に、特にイタリア人のシェフたちからの絶賛を受けたのも当然のことだったと思います。令和5年度兵庫県技能顕功賞を受賞され、後輩の和菓子職人の兄貴分として活躍をされています。

 最後にもうお一人、兵庫県技能顕功賞を受賞された組合員の安達文輝氏(芦屋柳月堂玉川)をご紹介します。

 氏は、毎年技術向上のために工芸菓子の各種コンテストに出場し、多数の受賞歴を有しておられます。「ものづくりマイスター」(厚生労働省認定)として活躍し、また無形文化財に登録された「菓銘をもつ生菓子」を製造する技術の優秀さから「優秀和菓子職会」の一員として文化庁にも登録されています。業界の後輩たちの指導とともに高校生の製菓養成施設での技術指導も行っています。

 さらに加えて和菓子職人の模範となる「優秀和菓子職」の資格を有する氏は、「文化庁文化交流使」のサポートでフィリピンのセブ島や、フランス・パリでの和菓子啓蒙活動に務め、のべ700人を超す菓子職人に和菓子の魅力を伝授しています。丁度この3月には台湾での活動で渡航しているところです。

 上生菓子では繊細な色使いや独特のデザインを考案し、難易度の高い技術を用いて作っておられます。そして和風工芸菓子では、唯一無二の高い技術で、日本の美の神髄である花鳥風月を写実的に表現しておられます。その高い表現力と技術力が評価され、数々の賞を受賞し、日本一にも輝いています。

 こうした兵庫県菓子工業組合の中核を担う方々が、後に続く若手の組合員を経営や技術でサポートして下さることを楽しみに致したいと思っております。

 兵庫県菓子工業組合事務局長・日崎隆広

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