各地の菓子店探訪
青森県菓子店の投稿

地域のまつりをお菓子に

津軽五所川原 立佞武多(たちねぶた)

不二屋製菓のお菓子

 我々お菓子屋にとって、お土産品を開発し販売するにあたり、菓銘はとても大事ですね。地域の特産品・文化や観光資源を題材に命名すると、お客様にも記念となって購入して頂ける切っ掛けとなると思っています。筆者もよその土地を訪れた時にはそんな銘菓を見て食べて勉強しています。そんなご当地銘菓が揃っているお店を紹介します。

 青森県の津軽(地図で見ると青森県の西半分)の中央部分は、演歌にも歌われています。皆さんご存じだとは思いますが津軽平野です。その真ん中あたりに位置しているのが五所川原市です。吉幾三さんの歌にも出てきますので有名ですね。また、近年では7階建てのビルの高さに匹敵するような高さを誇る立佞武多(たちねぶた)で有名になりました。世界の火祭りとして青森市のねぶたは有名です。電線のせいで前屈みになって俄然迫力が出るようになっています。そう、電線が邪魔じゃなかった時代には背筋はシャンとしていたらしいです。次に弘前ねぷた、扇型が特徴です。平面に描いたねぷた絵を貼りつけています。他にも黒石市や平川市、つがる市、他の町村にも地域ねぶた・ねぷたはありますが、その威容さで一躍有名になったのが五所川原立佞武多です。高さ25メートルから睨みつける迫力は類するものが無く、1998年に復活してからというもの、会期中には数十万人もの観光客を呼び込む祭りとなりました。復活する前は青森ねぶたのような形の祭りでした。そんな祭りの名前を冠した銘菓が揃っているのです。

 「立佞武多太鼓(マドレーヌ)」「立佞武多パイ(くるみ入りつぶあんパイ万頭)」「佞武多囃子(チーズ饅頭)」「佞武多好き(万頭)」「立佞武多羊羹(大納言入り小豆漉し餡)」「立佞武多タルトノア」和風洋風取り揃えていらっしゃいます。

 五所川原市には、ねぶた祭り以外にも古くからの地域の生活に根差した風習がまつりとして今もなお残っています。毎年6月中旬に行われる「虫おくり」です。虫おくりは作物を育てていく上で恐れられていた「風」、「日照り」、「害虫」の被害を受けずに出来秋の五穀豊穣と無病息災を祈願する民俗で、木彫りの竜の頭に稲わらでこしらえた胴体を付けた「虫」を若者たちが担ぎ、お囃子と共に村中を練り歩き、仕舞いには村はずれの高い木に「虫」をくくり付けて祈願します。それに因んだ商品が二つあります。

 「むしおくり最中(求肥入りつぶあん)」「むしおくり万頭」という二つの銘菓で地域の伝統と祭りを伝えています。むしおくり最中は市内で最も売れるお土産商品です。これらの銘菓を取り揃えているのは「不二屋製菓」です。店主の坂本憲哉さんは3代目で57歳の働き盛り、多忙な本業の傍ら、市内の道場で子供たちに剣道を指南する熱血漢なのです。店舗は立佞武多の展示・製作場所となっている立佞武多の館からほど近い場所にあります。青森にお越しの際は是非お立ち寄りしてみてください。

青森県菓子工業組合理事(西支部支部長)山崎康裕