各地の菓子店探訪
山形県菓子店の投稿

「拙速(せっそく)」

新札発行でお店がテレビ取材

レジスターの旧札を新札に入れ替える
レジスターの旧札を新札に入れ替える

 七月三日、待望の新札が発行された。私はいち早く山形銀行本店に出掛け、両替をしてきた。

 両替機の前には十人ほど列を作っていただろうか。その他にも窓口で両替する人も沢山おり、ちょっとしたお祭り騒ぎである。新札の話題を取材しようと、マスコミも多く来ていた。私は余程目立つのであろうか?両替を終えた所へテレビ局のキャスターが待ち構えていた。この度の新札について早速、質問を浴びせられたが、実は新札のモデルとなった渋沢栄一、北里柴三郎、津田梅子位は知っているが余り興味がなく、何と答えて良いかわからなかったが、持ち前のリップサービスで、新札を掲げスリーデー印刷の美しさを大袈裟に身振り手振りで答えたのが享け、夕方のテレビニュースに取り上げられた。お陰で沢山の友人・知人から冷やかされる羽目に陥った。

釣り銭を新札で渡す

 実は、両替の目的は別にあり、商売に生かそうとしたのである。買いに来てくれたお客様へ釣銭としてこの新札を渡し、驚いてもらおうとの趣旨である。このような機会は滅多にないので、先のテレビ取材班に名刺を渡し、私の事よりもお店に取材に来てくれるように言っておいた。

 翌朝、思惑通りテレビ局がニュースキャスターと共に取材に来てくれた。まず、レジスターの古いお札を新札に入れ替える作業をテレビカメラが収め、買いに来てくれたお客様に釣銭を渡す所をカメラが追いかける。初めて手にする新札を前に、お客様のビックリする顔を映し出し、感想を聞く。実際はそのような筋書きで取材が進行したが、事実、お客様の受けがすごく良かった。何人ものお客様が歓声を上げて喜んでくれたし、感謝された。あとひと月もすれば珍しくも何ともなくなるのにである。だが、当店では今も新札の話題で持ちきりである。

新札にビックリするお客様

 そういえば、元号が平成から令和に変わった日もそうであった。当時の菅官房長官の発表を、テレビの前で今か今かと待ち構え、新元号が発表されるや否や、早速型紙に「令和」の文字を彫り、饅頭に羊羹を刷り込んで発表から一時間くらいで、店頭に「令和まんじゅう」が並んだ。当然、お客様はびっくり。マスコミも大勢押し寄せて取材してくれた。

 私の商売の方針は「拙速」である。仕事はスピード感を持ってやる。下手でも拙くても他に魁て早くやることが成果に結びつくことを肌で感じている。

 山形県菓子工業組合副理事長・戸田正宏