御菓子司花扇
気持ちこもった和菓子作り
【祝・登録無形文化財】
去る令和4年10月12日、文化庁の審査を経て、《菓銘を持つ生菓子(練切・こなし)》が、【登録無形文化財】に登録されました。日本では日本酒に続いて2例目!! 和菓子の歴史・文化的価値が認められた大変嬉しいニュースとなりました。豆を軟らかく煮て、漉して、糖類を加え餡を練り上げる。更にはお餅類を繋ぎにした練切、小麦粉類を繋ぎにしたこなし、いわゆる加工餡を練り上げる。そこに職人の感性と技術を施し、四季折々の花々や花鳥風月の形に仕上げて御菓子に息を吹き込んでいく。仕上げに思いを込めた菓銘をつける。
そこには、世界に一つしかない御菓子が出来上がります。
当店では、常時9種類の上生菓子が並んでいます。その中で練切は6種類~8種類。練切は上生菓子の売り上げの大半を占めています。練切の魅力として、何といっても他の御菓子類と比べて、圧倒的な造形力があります。そこに、青・赤・黄の三原色を駆使して、様々な色に染めて御菓子を表現していきます。お店のショーケースでは、伝統的な和菓子のデザイン(御茶席で使えるようなわびさびを意識したもの)、次に、今でいうインスタ映えするようなデザインを1~2種類、並べるようにしています。伝統的なデザインは、あまり主張しすぎない色・味を意識した抽象的な御菓子、インスタ映えする様なデザインは、可愛さやリアルを意識した写実的な御菓子。対照的な表現の御菓子ですが、共通している事は、拘った材料と知識をつぎ込んだ練切餡です。職歴25年と和菓子業界ではまだまだ未熟者ですが、これまでに培った知識や経験をフルに使い練切餡を練り上げます。季節、その日の気温・湿度、火の加減、水加減、生餡の状態により練切の出来具合が変わります。神経を一番研ぎ澄ます瞬間です。
練切餡が出来上がり、形にしてお客様に渡るまで、自分自身、何より一番大切にしている事は〝気持ち〟です。御菓子作りの根源です。根性論にも聞こえるかもしれませんが、やはり最後には〝気持ち〟のこもった御菓子が一番だという事を大事にして日々御菓子作りに励んでいます。その裏付けには、餡の主材料である豆農家さんから始まり、砂糖生産者、先人が弛まない努力で作り上げてきた製法や知識、何よりお客様の笑顔、一つでも欠けたら美味しくて美しい御菓子は出来上がりません。全てに感謝を忘れずに御菓子作りをする事が、皆様への恩返し、そして和菓子業界の発展に少しでも繋がってくれれば幸いかと思います。
今後とも【登録無形文化財】に登録された事を、和菓子職人として誇りを持ち、啓蒙活動をしながら、皆様に和菓子を広げていけるように頑張っていきたいと思います。
御菓子司花扇・職長・髙橋功典