あんこ屋のブランディング
松原製餡所
今回は、昭和22年(1947年)に神戸市兵庫区にて創業し、現在は神戸市中央区に本社・工場を構える株式会社松原製餡所さんのご紹介です。2024年4月3日に神戸市灘区の六甲道駅前にオープンされたアンテナショップ「あんtena(あんてな)」をお訪ねし、昨年11月に三代目の代表取締役社長にご就任された松原秀樹さんにお話を伺いました。
〜御社の歴史を教えてください〜
昭和22年の創業以来、とにかく「あんこ一筋」を貫いてきた会社です。業務用のあんこをメインにとにかく高品質と安全安心を追求し、取引先のお客様の要望を叶え、さらに期待を上回る品質のあんこを提供すべく研究開発を重ねて参りました。その結果、独自技術の耐熱ゼリーを開発することでワイン、ラムネ等のアルコールや液体飲料の風味をあんに閉じ込めることができるようになったり、まるで生クリームを配合したような軽い食感になるフレッシュ技術を生み出したりと、あんこの新たな可能性を広げる取り組みをしてきました。また、あんこと言えば和菓子屋さんのイメージが強いですが、弊社はかねてより幅広いお取引先様とお付き合いしてきたため、パン屋さんからの要望に応え飛躍的にあんこのレシピを拡大し成長してきたという背景もあります。
〜今春にオープンされた「あんtena」について教えてください〜
弊社は「あんこ一筋」に業務用のあんこ開発をしてきたので、世間に名前が出る機会が少なく、いずれお店を持ちたいという考えは以前よりありました。ただ、和菓子屋になりたいということではなく、あくまで「あんこ屋」としてのお店を持ちたいと考えていました。そのような中、お取引きをしていた和菓子屋さんが後継者不在のため閉店されると言うことを聞き、その場所を引き継ぐことになり今回のアンテナショップ出店となりました。「あんtena」という名前には、文字通りアンテナの意味もありますが、「〝あん〟ってな!」とついつい誰かに話したくなる新しいあんこの可能性に出会えるお店、という意味も込めています。
〜手応えはいかがですか?〜
オープンから5ヶ月が経ちましたが、まだまだ日々手探りです。おかげさまで少しずつ認知され、リピーターの方も増えてきましたが、和菓子屋でなく「あんこ屋」としての事例も少ないので、社内のみんなで意見を出し合いながらメニュー開発などじっくりと進めています。ブランディングや開発も外注せず、あくまで自分たちでマーケティング調査を行って、自分たち独自のブランドを作っていこうと思っているんです。
〜今後の展望をお聞かせください〜
例えば、どら焼きと言えば・・・とか、カステラと言えば・・・など、地域や個人の嗜好はあれど、お菓子のジャンルにおいてはそういった◯◯と言えばココ、というのがあると思います。ただ、あんこと言えば・・・は全国的に見てもなかなかありません。私たちは、あんこと言えば松原製餡所!と言われるようになりたいと思っています。そのために、まずはこの「あんtena」が文字通りアンテナショップとして、マーケティング調査の場としてしっかり機能しつつ、百貨店催事やマーケット出店などでも幅広い客層にアプローチすることで、「あんこと言えば松原製餡所」のブランディングを確立したいと思っています。多店舗展開は考えていませんが、どうせやるなら海外出店とかもチャレンジしてみたいですね!笑
今回、松原秀樹社長とお話させていただき、自分自身が和菓子屋としてなんとなく「あんこ」の固定概念を持ってしまっていたことに気づき、恥ずかしい気持ちになりました。和菓子に限らず、日本のお菓子やパン、あるいは食事の場面においても、「あんこ」を活用することで食の楽しみ方や提案は無限に広がるように思いましたし、松原さんの思い描く夢の続きがとても楽しみに感じられました。この度はありがとうございました。
全国菓子工業組合連合会青年部部長・竹本洋平