各地の菓子店探訪
鳥取県菓子店の投稿

親子三代で経営する和菓子屋さん

甘味屋

 昭和42年創業の甘味屋(八頭郡八頭町)は「はちみつ饅頭」「栗しぐれ」などの定番銘菓、「いちご大福」など季節で内容が変化する限定菓子などが人気。

左から 秀文さん、金春さん、琉生さん

 要となる小豆は吟味して選んだ北海道産の十勝大納言。その他の材料は、できるだけ地のものを使う。甘味屋は現在も職人として店に立つ石破金春さん(86)が創業。2代目の秀文さん(56)をはじめ息子4人は全員、同店の菓子職人だ。さらに3年前から、次男・慎一さんの長男、琉生さん(23)が3代目として修業中。

 「創業当時は鳥取でも洋菓子屋が出始めの頃でしたが、私はやはり、和菓子が好きでしたから」と金春さん。夫婦二人三脚で長年、店の看板を守ってきた。

 2代目の秀文さんは4兄弟の長男。中学生の頃から店を手伝い「見様見真似で菓子を作りはじめ、自然と和菓子の世界に進んでいた」という。専門学校時代は、菓子の伝統からトレンド、社会の変化などを感じ、勉強をすればするほど甘味屋に対する思いが深まっていったという。

 3代目の琉生さんは、高校まで続けた野球の道に進むのが夢だったという。しかし大きなケガを経験、道が断たれた。そんな時に〝おじいちゃんの家〟が頭に浮かび、和菓子の世界に進もうと決めたという。琉生さんは「おじいちゃんの練り切りは色も形も素晴らしく、経験を感じます。伯父さんの作る餡は驚くほど美味しくてブレがない。まず腕を磨きたい。そして、和菓子をもっと若い世代に食べてもらえるような工夫もできたら」と意気込む。それを受け2代目は「菓子作り以外のことも学び吸収してほしい」。初代は「伝統をしっかりとわきまえ、季節や文化も大事に。和菓子作りを深めて」と、それぞれエールを送った。

まんばや

 明治10年創業のまんばや(倉吉市)は、「四季が伝わる和菓子屋さん」をコンセプトに、余計なものは入れず和菓子の伝統を守り手間ひまを惜しまない姿勢で、シンプルながら心なごむ和菓子づくりを心掛けている。また、商店街が推すアニメの登場キャラにちなんだ期間限定菓子を作るなど、新たな挑戦も。創業時から変わらぬ味を守る「志ば栗」や、甘さ控えめで上品な「本練羊羹」が好評。そして店頭には、若き7代目兄妹による生菓子が並んでいる。

左から 恵理子さん、律子さん、豊樹さん

 亡き夫と共に店の看板を守ってきた、5代目の鶴本律子さん(89)は「皆さんが喜んで、美味しいと言ってもらえるお菓子作りを毎日考えています」と話す。

 ビートルズ好きの6代目、豊樹さん(61)は「思いは5代目と同じ。和菓子は人の誕生からから葬儀まで、人生の節目に関わるもの。手が抜けません」。

 7代目の恵理子さん(25)は、子どもの頃から菓子作りや、黙々と細かな作業をこなすことが好きだったという。自然と父と同じ道を志すようになり、修業を経て、まんばやで働き始めたのが2年前。菓子作り歴は6年目だ。現在、主に経営面を見ている兄と共に、同店の主力となっている。「目も舌も厳しいお客様や、お茶の先生にも厳しく教えていただき、ようやく最近、褒められることが増えてきて嬉しいです」と恵理子さん。

 そんな7代目に対し「教えられることの多くは教えた。あとは個性を大切に、自分たちの発想で店を築いていったらいい」とエールを送る豊樹さん。

 これを受け恵理子さんは「若い人たちがケーキ屋さんくらいの感覚で生菓子を買いに来るような店に。店の伝統、味・品質を外すことなく、次につなげていきたい」と話した。

 鳥取県菓子工業組合理事長・小谷治郎平