「綿あめ考」
創意工夫で高付加価値を

山形は昔、正月や初市で縁起物の風物詩として「旗飴」が売られていました。山形の名産である「紅餅」を模した飴。紅餅は染料として盛んに作られ、金と同等の高額で取引されていました。
今は「旗飴」の代わり、引飴製の「初飴」が主流ですが、現在でも正月や初市には欠かせない縁起物の一品となっています。
昔は飴屋さんも数多くあったのですが、今では本日ご紹介する、県内唯一の地飴本舗「大山製菓」さんのみとなりました。その「大山製菓」が面白い事をやっているとの噂を聞きつけ、取材に訪れました。
工場に入ると砂糖の甘い香りが漂い、幸せな気分になります。そして、そこには出来たての「綿あめ」が。それも小さな愛らしいバケツ型の密閉された容器に入った綿あめ。「大山製菓」は色んなフレーバーで味と香りを付けた飴玉がラインアップされています。普通、綿あめの材料はザラメ糖ですが、その飴玉がそのまま綿あめの原料として使われます。綿あめなのに味と風味は口溶けのいい「飴玉」そのものです。
縁日で売っている綿あめはキャラクターの書かれたビニールの袋に入っていますが、家に持ち帰る頃には空気も抜け、三分の二程に萎んでしまい、流通菓子としては不向きです。そんな課題をクリアしたのがプラスチックのバケツ型容器。聞けば、味噌屋向けに開発した容器なのですがコストの面で味噌屋から見放されたもの。でも綿あめを長期保存するのには持ってこいの容器です。社長の鈴木健太郎氏がこの容器を見付け「綿あめ」作りを思い立ったそう。実は、開発のきっかけは老人ホームのお年寄りの声。昔を思い出してか、「初飴が食べたい」との要望があり、綿あめなら喉を詰まらせる心配もいりません。
丸い飴玉をそのまま綿あめにする機械を開発し、可愛らしい容器に詰めて販売した所、評判も上々。今ではさくらんぼ味やラ・フランス味、パインサイダー味等、地元の特産品を使い、六十種類以上もの綿あめを作っているそうです。筆者も試食させてもらいましたが、色々なフレーバーの効いた綿あめに感動さえ覚えました。
今回、なぜこのような商品を紹介しようとしたかといえば、大山製菓で作る綿あめは高付加価値商品だからです。昨今の菓子原材料の高騰で我々の業界は大変苦労しています。原料高を価格転嫁できる店ならまだ生き残れますが、出来ない所は全く利益が出なくなっています。でも、大山製菓さんなら飴玉四、五個もあれば一個分の価値ある綿あめが出来ます。大きい声で言えませんが大半は「空気」です。空気を上手に売る方法を紹介したかったのです。
皆さんも創意と工夫で高付加価値商品を開発しましょう。そして、明るい菓子文化を維持するため、もっと利益を出しましょう。
山形県菓子工業組合・副理事長・戸田正宏
全国菓子工業組合連合会