想いの継承
感謝の気持ち

今から約120年前、明治の後期に創業者の井上治介がリアカーを引いて生産者様の自宅を一軒一軒訪問し、米や大豆や小麦などの雑穀を集め、水車を使い製粉したのが生業の始まり。代が変わり5代目の現在も製粉方法は変わったものの穀物の製粉を中心に営業を行っている。
どの業態にも見られる傾向だが、生産者様も高齢化が進み、それに加えて次の世代の担い手が少なく、創業当時に比べると生産者様の件数が激減している。
地元での原料調達が厳しくなっている状況下で、如何に地元原料を使った商品作りをしていくかが今後も課題になっていく。
そうした中で現在取り組んでいる事が二つある。一つは生産者様の所得向上に向けた加工品の製造で、お預かりした穀物をきな粉・米粉・豆菓子・ポン菓子等に加工してお渡しし、それぞれ近隣の道の駅や直売所で販売してもらい生産意欲の向上に繋げてもらえればと考えている。もう一つは青大豆の契約栽培で、現在7件の生産者様に栽培していただいている。今後も契約先を増やしていきたいと考えている。

良質な原料をどれだけ良い状態でお客様にお届けするかを試行錯誤した結果、現在行っている「直火焙煎法」に行き着いた。この焙煎法は大量生産には向かないもので技術も必要となってくる。一度に焙煎できる量は3~5㎏程度、ムラなく全体に火を通すのは難しい作業で効率的ではないが、日々の天候に左右されながら、丹精込めて栽培されている生産者様の想いをお客様に届けるためには手を抜く訳にはいかない。
製粉から始まった仕事だが、現在は菓子の製造も行っている。初めは豆菓子やきな粉飴など大豆を使った物だけだったが、20数年前から羊羹やたい焼きなどの小豆を使った菓子の製造を始めた。それまでは生産者様から大豆の買入をする際に小豆も同時に買っていたが、ほぼ全量を製餡所様や菓子店様に販売していた。ある豊作の年、100俵程集まり全量を販売する事ができず自社で煮たのがきっかけだった。ここ数年は1~2俵程度しか集まらず、北海道産を使用している。できれば地物を使いたいが現状を考えると難しい。

原料となる穀物を栽培してくださる生産者様や納入業者様、製品を取扱ってくださるお取引先様や商品を購入してくださるお客様、様々な方々に支えていただいて今の会社がある事への感謝の気持ちを、次の世代に繋いでいきたい。
有限会社井上商店代表取締役・安達宏行
全国菓子工業組合連合会