「マンゲツモチ」
こだわりの極み

今年は令和の米騒動で市場も農家も混乱が続きました。また、異常なほどの高温続きで稲の生育を心配していましたが、稲刈りも終わり例年以上の出来とのこと。一安心です。
稲刈りで思い出されるのは、毎年新聞に掲載される皇居内の圃場の天皇陛下直々のお手植えと稲刈りです。瑞穂の国・日本の伝統行事として陛下自ら守り伝えてくれています。
ある山形県内のお菓子屋さんが皇居勤労奉仕に参加した時の事。すっかり刈り上げた稲が天日干しされているのを見て、宮内庁職員に品種を尋ねたそうである。うるち米は「ニホンマサリ」、もち米は「マンゲツモチ」とのこと。
もち米は和菓子屋にとり主要原材料の一つ。そのお菓子屋さん、この「マンゲツモチ」が気になって気になって…。
皇居と同じ品種のもち米ならば話題性もあり、お客様もきっと喜んでくれるだろうとの思いを募らせ、帰宅してからは「マンゲツモチ」の種籾が欲しくなり、持っている人がいないか探し歩いたという。
これまでもそのお菓子屋さん、もち米にはこだわりを持ち、最初は地元産の「ヒメノモチ」を原料にしていたが飽き足らず、山形古来の品種「デワノモチ」を契約栽培してもらっていた。ところが、山形市の西部、大曾根地区に「大曾根餅つき保存会」があり、その餅を食した所一目惚れ。翌年「オクシラタマ」という品種に切り替えた。
しかしまた気の多い店主、今度は「マンゲツモチ」だそうな。

思いは天に通じるもの。全国を探し回り、情報を発信し続けたところ、三重県のお米屋さんから連絡が入り、その種籾があるというのだ!
早速分けてもらい、契約栽培している山形の農家に持ち込んで増やしてもらった。三年がかりで作付けを増やし、今ではその菓子屋さんが使用する全量、「マンゲツモチ」で賄っているという。
そのお菓子屋さんの偉い所は価格交渉はせず、値段の事は農家にすべて任せているという。なるほど、多少割高でも菓子屋の場合は価格転嫁ができます。農家との共存共栄を実践しているのだ。今ではその農家、息子が喜んで跡継ぎしてくれているとのこと。こんな農家が増えることは食料自給率の低い日本にとり願ってもないこと。私たち菓子屋も農業支援ができる事例として記憶に留めたいと思います。
さて、お味のほうは?
色が白く、風味も豊か。腰も程よく食味も大変良いとの事。お客様の評判も上々のようである。
山形県菓子工業組合・副理事長・戸田正宏
全国菓子工業組合連合会