「貝がら節もなか」を事業承継
みどりや菓子舗の山崎晃裕代表

地元イラストレーターがデザインした、貝殻節(鳥取市の浜村地区が発祥とされる民謡)を踊る女性のイラストが描かれた、鮮やかな色使いの看板がひときわ目を引く和菓子店、みどりや菓子舗(鳥取市気高町浜村七八三―一五六三、山崎晃裕代表)。
浜村地区で100年の歴史を誇る老舗菓子店「みどりや」が生んだ鳥取銘菓「貝がら節もなか」の製造販売を承継し、2024年7月にオープンした店だ。
「貝がら節もなか」は、伝統ある「貝殻節」にちなみ、貝の形をした皮に餡をたっぷり乗せてぴったり貝合わせをした、かわいらしい形の最中。パリッとした皮の食感と共に、餡の味には定評がある。
近くにあるスーパーで買い物帰りの客や地元住民が店に立ち寄っては、お土産用、自宅用などとして買い求めていく。夏場にはかき氷や、貝がら節もなかをトッピングした「貝殻節アイス」が人気を集めた。
この「貝がら節もなか」、2023年にみどりやが廃業を決めたことにより、存続の危機に立たされた過去がある。「廃業すると聞いた瞬間、これで浜村の町が一段と寂しくなると直感した」と話す山崎代表。同氏は当時、みどりやに生餡を卸す㈲内藤製餡所(現在は廃業)の職員でありかつ、同店の近所で生まれ育った一人でもあった。「貝がら節もなかの餡で育ったようなものです」と笑う。
ある日、餡の配達に行くと、みどりやの長秀則代表から何気なく「(引き継いで)やってみんか?」と言われ、心が動いた。その後、家族の後押しもあり事業承継を決心。経営面など様々な不安はあったが、「この味を残したい」という思いが勝った。
「駅周辺の店が一軒、また一軒と減っていき、製餡所時代には跡継ぎがいないなどの理由から廃業する取引先を見てきた。昔からみどりやは、地域のつながりが濃い浜村地区で、和菓子以外にも何でも置いているコンビニのような存在で、地域のつながりを深める拠点の一つでもあったんです」と振り返る。
同年11月に製餡所を退職。年末年始の繁忙期を含め約5ヵ月、先代による厳しくも丁寧な指導を受け、製造所を兼ねた店舗を現在の場所にオープンした。
餡の仕込みは家族が協力して行う。仕込み中に閃いては、あれこれ素材を試すなど、新商品の開発にも余念がない。事業承継後には、貝がら節もなかの新作「抹茶」を発売している。
現在の大きな目標は「完全オリジナルの最中」を生み出すこと。先代から受け継いだ伝統の貝がら節もなかに負けず劣らずの新名物を自らの手で、と意気込む。
最後に「まずは貝がら節もなかの、地元での更なる定番化を。そして県外への発信、販路拡大にも力を入れたい。伝統を守りながら新たなチャレンジを続けていく」と話した。
現在の商品ラインナップは、小豆、柚子、抹茶、生姜小豆の4種の「貝がら節もなか」と、因幡の白兎で有名な白兎神社の「白兎ジンジャー最中」、鮎の形をした「清流千代川 鮎最中」。生姜は地元産の「日光生姜」を使用している。
鳥取県菓子工業組合理事長・小谷治郎平
全国菓子工業組合連合会