初冬の大山路の老舗を訪ねて
後継者シリーズ ②
今回第二弾で紹介するのは、 伊勢原支部の大山参りで有名な大山阿夫利神社の参道で店を構える 「良辨 (ろうべん)」 の一人娘の、 小笠原理子 (あやこ) さんです。 店を継ぐことなど考えてもみなかったという理子さんは少しはにかんで答えてくれました。
大学を卒業後に、 芽生えた歴史の重み。 製菓学校を出て、 お父さんの下で修業を始め、 いつしか和菓子の道へ。 そして、 去年の夏、 製菓衛生師の試験の願書を提出の為組合事務所へ立ち寄ってくださったのが、 最初の出会でした。
話を聞いている間に、 理子さんの人柄についつい引き込まれ、 お店の歴史を知る事になりました。 慶応年間創業以来一四五年を重ね 「一つ一つ手作り、 出来立てを提供する」 というモットーを江戸時代から変わることなく、 現代まで受け継がれ、 長く人々の心に残るお菓子を作ると、 さらりとお父様で五代目ご主人は言ってのける事が出来るすごさに、 圧倒され感激でした。
大山への坂道にで~んとした重厚な店構え。 エッ今は江戸時代?タイムスリップしたかのような空間。 周りは、 山に囲まれ、 川が流れ、 静寂に包まれて四季を通じて美しい所です。 お父様、 お母様に、 愛されたお譲様が六代目を継ぐ決心は、 たいへんな思いだった事でしょう。 歴史があればある程これからが重要だと。 だからこそ、 私は応援したいのです。 経験を重ねても、 初心を忘れず、 素直な心をもち続け、 修行に励んで下さい。
終りに、 お店の名前 「良辨」 とは、 大山寺を創建した偉いお坊さんが、 身体を清められたという良辨滝の前で、 営業を始めた事からその名前をつけたそうです。 伊勢原駅前にあるカタログに 「大山まん う本舗良辨」 と紹介されてます。 紅葉の大山路の旅は、 人の優しさにふれて心和むステキな旅でした。 今度は、 桜の季節に訪れたいと思います。
神奈川県菓子工業組合事務局・神原裕美子