郷愁漂う相模路の老舗を訪ねて
後継者シリーズ③
今回第三弾で紹介するのは、厚木支部で御菓子司 二葉さんの三代目、大久保縁さんです。縁さんは高田馬場にある東京製菓学校を出て祖父の啓一さん八十六歳と大叔父さんを師匠として和菓子作りに精を出して、日々精進しています。
二葉さんは大正十二年の創業。初代長吉さんが当時の本所区北二葉町から関東大震災の被害により親類を訪ねて現在の海老名へ移り住み、飴屋として店を始めたそうで、周辺住民から「飴長さん」と呼ばれ親しまれていたそうです。
啓一さんの頃には御菓子の種類も増えて、引菓子の注文も多かったので夜間の製菓学校に通い、技術を習得しながら現在の二葉さんを築いて来られたそうです。その中でもずっと育んできた鮎祠紅と酒饅頭は今でも地元に愛されている商品の代表です。また酒饅頭は、お米を炊いて麹を混ぜて作る本格派で、五月下旬から十一月までは販売しているそうです。
そんな歴史に華を添えたのが孫の縁さんなのです。縁さん曰く、この海老名周辺は茶道の先生が何人も居られて、実際に、縁さんも茶道を習い始めたのをきっかけに以前よりもお茶の先生からの茶席菓子を頼まれることが増え、季節や花・自然をモチーフに女性の感性を生かして試行錯誤しながら心を込めて手作りしている様です。でも、縁さんは学校を出てから、まだ何年も経って居ないのでと、謙遜していましたが、やっぱりそこは、師匠、祖父の品物に対する姿勢と探求心は自然と縁さんへ、受け継がれて居るのだなあと実感しました。最初は大変だったそうですが、今では、何品か試作を持ってお伺いをしてから、製造に取り組むと言っていました。縁さんの母曰く、お茶の上生を作る時は、一人で夜中に作っているのよと私に教えてくれました。最後にこれからの縁さんの活躍を祈っています。
神奈川県菓子工業組合広報部・亀岡肇