長栄堂菓舗
地元を愛し、お菓子を愛する
今回訪れたのは、壮大な渦潮、そして菓子作りに重宝されるなると金時で有名な徳島県鳴門市です。鳴門市はなると金時のほかにワカメ、鯛などの特産品もあり、四国八十八ヶ所巡りの出発点である霊山寺もあります。
その鳴門市撫養町に古くから店をかまえております長栄堂菓舗にお伺い話を聞いてきました。出迎えていただいたのは4代目になる春木浩良氏です。歴史ある雰囲気の店内には多くの商品が並べられていました。創業は大正6年。昔から店の前を行き交うお遍路さんへのおもてなしを大事にしてきたそうです。
春木氏は徳島県菓子工業組合青年会の副会長を務め、また地元のお菓子屋が集まって立ち上げた徳島新銘菓チェーンの会長も務めており日々仲間とお菓子について語らい、勉強をしているそうです。この徳島新銘菓チェーンではみんなで開発した商品を、その加盟している店で同じ包装パッケージを使って売り出しています。ひとつの商品をみんなで共有するすばらしい考えだと思います。
そして長栄堂菓舗にも創業から作られているすばらしいお菓子に「初霜」があります。昔撫養町には多くの塩田があり塩作りが盛んな時代がありました。その塩田が朝日にキラキラと光る風景が、寒い冬に霜があたり一面に降りた風景と似ているところからイメージして名前をつけたそうです。「初霜」は砂糖をふんだんにまぶしたお菓子で一口食べるとサクッとした食感で口の中ですぐとけていくなんとも素朴でおいしいお菓子です。
撫養町では砂糖をたくさん使うことがよいことだと昔から言われているそうで、この地域の赤飯には塩と一緒に砂糖も入れて蒸しあげるそうです。赤飯にかけるのもゴマ塩ではなくゴマ砂糖なのだとか。ちょっと違和感があるかと思いましたが、よく考えるとおはぎももち米と砂糖を使っていますね。おもしろい発見です。やはりいろんなところに出かけるとその土地ならではの食文化を知ることができます。
最後に春木氏は昔からの風習、文化をこれからも大事にしていき、地元に根付いたお菓子をこれからも安く提供していき、そしてお客様に安心して食べてもらいたいとおしゃっていました。ずっと穏やかに話してくれた春木氏に地元を愛し、お菓子を愛する情熱を感じた取材でした。
中・四国ブロック長・高橋宏暢