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三国名物「酒万寿」

北前船がもたらした伝統食

酒万寿 当店のある三国町は日本海を望む九頭竜川の河口に位置します。古くは三津七湊の一つに数えられ、江戸時代には、日本を回航する北前船の主要な寄港地として栄えた湊町です。

 河口にある湊ということで、航行時の障害となる船底の貝や海藻などを、真水で駆除できるので、たくさんの船が停泊しました。

 当時は、北前船を所有する廻船問屋が羽振りをきかせ、様々な人と物が行き交う異文化交流の地でした。北前船が寄港地にもたらしたものは、数多くありますが、三国名物「酒万寿」もその一つです。

 米麹と餅米を使い甘酒を熟成させて作る製法は、北前船の船乗りたちより伝えられました。

 ここ三国では「酒饅頭」を「酒万寿」と表記します。大だな(大旦那)と呼ばれる豪商たちに、酒万寿を「万の寿ぐ」と、おめでたい縁起の良いものと重宝がられ婚礼や祭り、建前などの祝い事に使われました。

 特に婚礼では、花嫁を一目見ようと集まった人達に、家の二階から蒔いて振舞う、「万寿蒔き」が盛大に行われたようです。

 現在では、万寿蒔きは少なくなりましたが、ご近所や親戚知人に紅白の酒万寿を配る習慣は続いています。

 最盛期には相当数あった酒万寿屋も、今では半数以下になっています。それぞれの店が秘伝の酒種を持ち、香ばしい焼印が特徴の三国酒万寿。地元の人も好みの店で誂え、人生のさまざまな場面で登場する、伝統食となっています。

 福井県菓子工業組合青年部会会長・今出公教

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