福井名産 「雪がわら」
創業の精神を守り抜く
「雪がわら」は上質の昆布をカリカリに焼いて、お砂糖をまぶし乾燥させたお菓子です。
北陸地方の雪は今でこそ地球温暖化のせいか少なくなりましたが北陸福井は豪雪地帯として有名でした。先代社長は何とか福井独自のお菓子を作りたいと考え、昆布を雪国北陸の黒光りする瓦にたとえ、うっすらと砂糖を掛けて雪が積もったところを表し「雪がわら」と命名しました。
かねてより越前福井は江戸時代から北前船での海運で、北海道から昆布が大量に運ばれ、中京関西への加工供給地として栄えました。「雪がわら」のルーツは北前船に始まっています。そして産地も北海道釧路厚岸産、昆布森産の厳選された2等品にこだわっています。1等品では身が厚くてお菓子として固くなってしまうからです。
作り方としては昆布を酢につけて柔らかくします。
昆布の原束は浜辺で天日干しているせいか、砂や小石を巻きこんでいる場合があり、これらの異物を取り除きしわを伸ばして定規格にカットしていきます。これをガス火で香ばしく焼いて、砂糖を掛け乾燥、砂糖を掛け乾燥と13回繰り返し真っ白な雪がわらが仕上がります。
昭和35年(1960年)発売開始以来50余年、甘いとか、塩辛いとかいろいろとご忠告を頂き続けてきましたが別に気にせず、変わることなく発売当時の製法と味を守り続けてきました。過去には試行錯誤して特殊品も開発いたしましたが、現在残っているのは原点の商品だけです。「変わらない事」の大切さを先代は教えてくれました。新商品を開発するのも大切ですが、今ある商品に磨きをかけ、用途を開発したり付加価値を与えることでお菓子はまた生き返ります。
時代は変わり、温故知新ではありませんが古き物にも新しさを見出すことができ、古き物の中にこそ、本来のお菓子の姿があるのかもしれません。
写真は先代から授かった30年以上前の「雪がわら」のガラス瓶です。
この瓶を見るたびに、先代の苦労がしのばれ、今あらためて「原点」「創業の精神」を守り抜いていきたいと思います。
福井県菓子工業組合専務理事・田中義乃