吉野山
◇ピンクに染めた上南羹に小倉きんとん餡を流し合わせて、春の吉野山(桜)を表現した上生菓子です。
〔上南羹生地配合〕(トヨ型1本分)
粉末寒天………………… 2g
水………………………250ml
グラニュー糖…………130g
水飴 …………………… 15g
上南粉 ………………… 20g
赤色素
〔小倉きんとん餡配合〕
粉末寒天………………… 2g
水………………………200ml
グラニュー糖 ………… 50g
白並餡…………………100g
小豆こし並餡 ………… 50g
蜜漬け大納言…………150g
水飴 …………………… 15g
〈生地仕込〉
【小倉きんとん餡】
①鍋に水、粉末寒天を入れて弱火に掛ける。
*鍋に粉末寒天を先に入れると底に付着して焦げる場合があるので、水を半量入れたところへ粉末寒天を入れて残りの水を加える。残りの水を加える時に、表面に浮いたり鍋の縁に付着した粉末寒天を流し入れるようにする。
②最初は弱火にして木杓子でゆっくりかき混ぜる。鍋の底から泡が出始めたら中火にする。
*粉末寒天は水漬けしなくても溶けるところが便利だが、急激に加熱すると溶ける前に煮詰まって溶けづらくなるので、最初は弱火で粉末寒天をふやかしながら加熱していく。また、勢いよく混ぜると粉末寒天が鍋の縁や木杓子の上方に付着して溶けなくなるので、ゆっくりと混ぜるようにする。この時、放置してしまうと鍋底に粉末寒天が沈んで焦げてしまうので注意する。
③沸騰して粉末寒天が溶解したら、グラニュー糖を加えて溶かす。
*粉末寒天が溶けていないうちに砂糖を加えると、粉末寒天が溶け残る場合があるので注意する。
④グラニュー糖が溶けて沸騰したら白並餡、小豆こし並餡を加えて溶かし、再沸騰したら蜜漬け大納言を加える。
*餡が冷たい場合、一度に加えると寒天が固まりかかり、そのまま混ぜると寒天のコシが切れる(凝固力が弱まる)ことがあるので、2回位に分けて加える。
⑤450gに煮詰まったら火を止め、水飴を加えて溶かす。
*湯煎をしておく。
【吉野羹】
①小倉きんとん餡と同様にして粉末寒天、グラニュー糖を溶かす。
②300gに煮詰まったら火を止め、水飴を加えて溶かす。
③鍋底を軽く水に浸けて荒熱を抜き、上南粉を加えてホイッパーで手早く混ぜ合わせる。
*高温のまま上南粉を加えて混ぜると餅状になる場合がある。
⑥鍋底を水に浸けて冷ましながら、ピンク色に着色する。
*軽い上南粉は浮いてくるので、ホイッパーで軽く混ぜながら熱を抜く。この時必要以上にホイッパーでかき混ぜると寒天の凝固力が弱まるので注意する。
⑦40℃位まで熱を抜いたら、手早くトヨ型に流し込む。
⑧小倉きんとん餡を軽く再加熱し、⑦にそっと流し込む。
*流した吉野羹の縁の方が固まり始める(半止まり)タイミングで小倉きんとん餡を流し合わせると、切り口が山の形になる。
〈仕上げ〉
①完全に固まったら、かたく絞った布巾の上に取り出す。
②羊羹包丁で3㎝幅に切りる。
「吉野山」は奈良県中央部吉野郡の山稜地帯の総称であり、金峯山寺を中心としたお寺が点在する地域名となっています。
古くより桜の名所として有名ですが、これはその昔に桜を神木としたところから平安時代のころより桜の苗木が数多く植えられてきたからと言われています。
和菓子では「吉野」と言えば桜を意味する代名詞となっています。
また一方で、葛の産地としても有名なところから、葛を使った和菓子の代名詞ともなっています。
専修学校 日本菓子専門学校教育局通信教育部部長 小野礼司 教師
和菓子講習 基礎編より