紅白饅頭
日本の四季にはそれぞれに風情がありこの風情を生かした和菓子があります。この和菓子は幼い思い出から大人になっても、心のふるさととして息づいています。和菓子を時代に即した商品に育てるため、今一度掘り下げて考えてみました。
和菓子の原点は饅頭です。唐国の肉餡を日本風に変え小豆餡を使用した饅頭から進化して現在の和菓子があるが、原点の紅白饅頭が時代の進化に乗り遅れているような感がする。お祝いの饅頭は一度に作る数が多くなり、使用前日に作り、5℃前後の冷蔵庫保管。澱粉質は0℃が一番老化しやしく紅白饅頭は例外ではありません。お祝いでいただいた方もその日食べ終えれば問題がないが、お祝いの饅頭は大きく一度に食べきれず、かといって家族一同が飛びつく状態でもない。また、冷蔵庫保管、二~三日して食べた時、皮はボロボロ、中餡はバサバサ饅頭の価値は薄れる一方です。
ある和菓子屋さんは、大きい饅頭の特別注文は受けないことにしたとのこと。お菓子の少ない時代に、お祝いにいただいた紅白饅頭の思い出が多く捨てきれない現状ではあるが、このままでは和菓子のイメージそのものまで低下するのではないか危惧される。紅白饅頭を食べたお客様がまた食べたくなるような製品が出来れば最高なのだがそれも難しい。紅白饅頭の材料は薄力粉が50%砂糖33%と水から出来ており、糖分を多くすれば蒸れにくくなり、水分を多くすれば形が出来ない。出来たてを食べていただくのが最高であるが、せめて製品は低温保管(18℃)にして、早めに食べていただくことを徹底する。見栄えだけの大きい饅頭ではなく食べやすい大きさの饅頭をお客様に進める。大きい饅頭は中餡の比率が多くなり、大きくなればなるほど中餡が多くなる。今回は小麦粉饅頭の基本配合からははずれるが、生地に並餡や油脂を加えて澱粉の老化しにくい生地にしている。中餡にはくどくなる酸糖化水飴を使用せず、しっとりする転化糖を使用した。
●配合A
薄力粉…………………100g
上白糖 ………………… 70g
水 ……………………… 35g
イスパタ………………… 2g
●配合B
薄力粉…………………100g
F・D大和芋 ………… 10g
上白糖 ………………… 90g
生クリーム(38%)……30g
ホワイトヨーク ……… 50g
白並餡…………………100g
イスパタ………………… 3g
・中餡
小豆こし生餡 ………1000g
グラニュー糖…………550g
ハローテックス………100g
水………………………300g
食塩……………………… 2g
生地 …………………… 20g
中餡 …………………… 40g
手粉……………………薄力粉
●工程(配合A)
①上白糖に水を加える。
②薄力粉にイスパタを混ぜて加える。
③ヘラでこね合わせ、20分位ねかす。
●工程(配合B)
①上白糖に生クリーム、ホワイトヨークを加えてホイッパーで混ぜ合わせる。
②白並餡を加えて混ぜ合わせる。
③薄力粉・イスパタ、FD大和芋を混ぜて加え、ヘラでこねる。
④赤色素は薄力粉を加える前に着色する。
⑤冷蔵庫で20分位寝かせる。
⑥薄力粉の手粉で中餡を包み、丸腰高に整えて、ぬれ布巾、シリコンペーパーを敷いたセイロに並べて12分位で蒸し上げる。
⑦網わたしに移して冷ます。
⑧冷めてから個装する。
生地は冷蔵庫で冷やしながら
*製品は低温倉庫に保管する。
*ホワイトヨークは加糖20%の冷凍卵。キューピー㈱製品。蒸すと白くなる卵黄
*手粉はビニール袋に入れ、冷凍庫に入れて冷やして使用する。
*生地は冷蔵庫で冷やしながら中餡を包む。脂肪の関係で常温では生地が軟らかくなり、手粉が多くなるのを防ぐ。
*饅頭の大きさは60gであるが三つ種で最大包める大きさ。
*これ以上では三つ種では蒸れない。
*FD大和芋は生地を締める働きをして中餡を包みやすくする。蒸すと粘りが消える。
*薄力粉は国内産小麦粉含入が多い方が出来上がりの饅頭が老化しにくい。
*個装はフイルムより防湿セロハンの方が製品は乾きにくい。
*ホワイトヨークの代用に普通の鶏卵を使用しても良いがその場合、上白糖10g液卵40gに変更する。
専修学校 日本菓子専門学校 鎌田克幸 氏
和菓子講習より