お菓子のレシピ集
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蒸し羊羮(蒸して作るひつじのあつもの)

蒸し羊嚢次世代に伝授伝承しなければ成らない商品【蒸し羊羮編】

 日本の四季にはそれぞれに風情がありこの風情を生かした和菓子があります。この和菓子は幼い思い出から大人になっても心のふるさととして息づいています。和菓子を時代に即した商品に育てるため、今一度掘り下げて考えてみました。

 和菓子商品の中で最も古く、製法がそのまま商品名となり未だに万民に親しまれているめずらしい製品。配合も手近な材料で出来ており蜜漬け栗を使用することにより高級感も生まれ、次世代に伝授伝承しなければならない商品の一つといえる。蒸し羊羮は平安時代後期、盛んになった「羮」(お吸い物)が改良されている。平安時代は一日二食の生活で中間にお吸い物を食べていた。当時隣国唐国では「羊の肝」「牛の皮」が最高の珍味とされていたが日本では四つ足の動物を食べる習慣が無かったので、穀類で羊の肝、牛の皮を作ってお吸い物に浮かべて食べた。やがて鎌倉時代になりお吸い物からお茶を飲む習慣が伝わり、お茶菓子の需要が生まれた。お吸い物に浮かべていた、「羊の肝」「牛の皮」らしき物が小豆、米の粉等で蒸して作るようになり、やがて室町時代になり砂糖の輸入とともに砂糖の味付けがされた。

黄金分割  
 現在のような蒸し枠に流して角切りにされたのは、江戸時代の日本美術創設者「琳派」(尾形光琳)の提唱する「黄金分割」一寸の一寸五分高さ一寸、(この大きさは安定して美しい形)を利用したものである。現在の配合は小豆こし並餡に小麦粉を加えてもみ混ぜ、流れる位の硬さにして蒸し枠に流して蒸し上げる。戦前、戦後はその日限りの製品として扱われ、日持ちなど考えていなかったが、冷蔵庫、冷凍庫、脱酸素材の出現で配合の変更を余儀なくされている。当初の小麦粉だけでは老化が早いので、上新粉、餅粉を使用し、歯ごたえを出すために葛粉などの澱粉を使用する。また、お土産の需要に応えるため脱酸素材が使用されるが、これが大変に気がかり。小豆餡や穀類には「糸菌」が含まれており通常の蒸気では滅菌されない。環境が悪くなるとこの菌は芽胞に閉じこもる。酸素が少なくなると活動を始めてねばねばの糸を出す。納豆の糸状になるので別名納豆菌ともいう。この菌では食中毒となることはないが、消費者には腐敗品となるので商品にはならない。

◎蒸し羊羹(36㎝角)
小豆こし並餡…… 1400g
強力粉………………140g
浮粉 ………………… 20g
上白糖………………200g
食塩…………………… 4g
栗蜜………………約360g
蜜漬け栗……………600g

蜜漬け栗の糖度は35度

◎工程

①小豆こし並餡に強力粉、浮粉を加えて手でよくこねる。

②上白糖、食塩を加えて混ぜる。

③栗蜜を加えて硬さの調節をする。

④蜜漬け栗を加えて混ぜる。

⑤セイロにぬれ布巾と厚手ビニールをしきステンレス蒸し枠をのせる。

⑥生地を流し、平らにして40分蒸す。

⑦表面を平らにして、そのまま冷ます。

⑧完全に冷ましてから、蒸し枠からはずし一寸の一寸五分に包丁する。

⑨切り口を表面にして、フイルムで角包みにする。

*この配合では二日目が食べ頃でそれ以上は硬くなり美味しくない。

*小豆こし並餡は配当率60%。配当率70%の餡の場合は上白糖を使用せず、上白糖の分並餡をふやす。

*蜜漬け栗の糖度は最終糖度35度。蜜の糖度がこれ以上高くても低くても包丁後栗から蜜が出やすくなる。

*日持ちをさせる(七日間まで)には、強力粉を薄力粉に入れ替え、薄力粉の三割を餅粉に入れ替える。歯ごたえが少なくなるが、ぼそぼそ感がすくなくなる。

*老化が遅く歯ごたえ感を出すにはタピオカ澱粉を薄力粉の二割まで入れ替える。小豆の風味は薄れるが。

*冷蔵庫保管は澱粉老化が早くなるので常温保管。

*かびの発生を防ぎ七日間持たせるには、防湿セロハンで包みシールして、70℃20分殺菌する。

*蒸し枠は木製よりステンレスの方がはじ落としをしなくてすむ。

*蒸し布巾じかに流すとかび発生が早いので厚手ビニールがよい。

*正面に蜜漬け栗を並べる場合は予定時間蒸してから、蜜漬け栗に小麦粉をまぶして、表面にならべて、五分位再度蒸気で蒸す方法もある。

*蜜漬け栗を蜜ごと沸騰させて栗蜜を切り、蒸し上げた蒸し羊羹の正面に並べて、錦玉液をはけ塗りする場合もある。

*蒸し上げて冷めた蒸し羊羹を樟形に包丁してタケノコの皮で包んで十分位、蒸気で蒸す製品もある。

*葛粉、ワラビ粉などを小麦粉の何割かを入れ替えて食感を出している製品も販売されている。

専修学校 日本菓子専門学校和菓子教師 鎌田克幸 氏
和菓子講習より

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