横須賀浦賀「鴨居山口屋」を訪ねて
後継者シリーズ⑦
後継者シリーズ⑦を迎えて、今回紹介するのは、ペリー来航の港町「浦賀」からの歴史ロマンいっぱいの物語です。遠く幕末の頃と変わらぬ海風に吹かれて、浦賀駅を降りた私は、ふと、今は静かな港町ですが、歴史的に重要な町だった事を痛感させられる思いでした。駅前をぶらり、東の方面へ坂道を登り住宅街の中にひっそりと、今回ご紹介する「鴨居山口屋」さんはあります。ご主人は山口勉さんで、この地で三十年以上も根付いた老舗。お店と工場を併設し、お団子を中心に季節物として栗大福など素朴なお菓子を地域のお客様に提供して、近くの国道沿いに販売店をだされているそうです。
今回ご紹介するご子息の山口幸昌さんは、県内で修業をして、今は親子でお店を盛上げています。後継者がいない所が多い中、こうして継いでくれる息子さんがいるご主人は、とても幸せだなあとつくづく思わせられ、その性格でしょうかお菓子に温かさと思いやりがあり、きっと幸昌さんも、ずーっと地元に根付いて地元の為にお店を守り引きついで行かれることでしょう。いい人間関係を作り、幸せな家庭を築き、一生懸命に働く姿は好感が持てました。ちょうど、叶神社のお祭りと敬老の日が重なり、結構忙しい時期でした。
ここで、ワンポイントです。浦賀・叶神社は縁結びの願が叶う浦賀・叶神社といいます。浦賀の海をはさんで、東神社は平安時代創建、西神社は名匠の手による彫刻が二百三十以上も彫り込まれた社殿が見どころ。二つの神社でそれぞれ別々のお守りがあり、二つで完成するユニークなもの。若い女の子が喜びそう。
幸昌さんもお祭りに参加するそうでイベントなどで地域の方々が一つになる事は、お菓子屋さんだけではなく、いろんな業種が活性してゆくきっかけとなるいい機会で、積極的に参加して地域に貢献することこそが、これからの幸昌さんのお菓子作りに大きな一歩となると信じています。
お菓子は何か、ほんのりと心なごむ魔法のような物。ペリーさんは、日本のお菓子を食べたのでしょうか。ちょっと歴史ロマンを感じていただけましたか。私は今回の浦賀散歩で、心が豊になり、お菓子がまた好きになりました。終りに、若き後継者として、四人のお子様のお父様として、夢のあるお菓子を作り続けて下さい。期待しています。
神奈川県菓子工業組合事務局・神原裕美子