各地の菓子店探訪
福岡県菓子店の投稿

甘納豆専門店 石橋甘納豆

甘納豆専門店 石橋甘納豆

石橋正浩氏

 久留米市は、福岡県内3位の人口30万人の中核都市で筑後地域商業の中心地になります。

 「石橋甘納豆」は、柳川市へ続く幹線道路沿いにあり、周辺は店舗やマンション、古くからの住宅地と市内中心地にありながら落ち着いた町並みです。

 6年前に全面改装をおこない、新しくなった店舗の外観は、外装の白壁に長方形の青看板「石橋甘納豆」が目を引くデザインになっています。手入れのいき届いたエントランス脇の植栽を見ながら店舗に入ると、明るい店内は吹き抜けの天井で、壁には甘納豆の釜を一生懸命かき混ぜる職人のイラストに、「昔ながらの大釜で一粒一粒にこころを込めて…時代は代わっても変わらない懐し筑後の甘納豆」と書かれたひときわ目を引く巨大なパネルが出迎えてくれます。店頭正面に掲げられたパネルはお店のシンボルマークであり、その文言は良い商品を作りますというお客様への宣言にも聞こえます。

石橋甘納豆

 創業は1953年、今年でちょうど70年を迎えます。初代の石橋哲夫氏はもともと違う職業に就いていたそうですが、京都に旅行に行きそこで食べた甘納豆が、あまりの美味しさで自ら甘納豆屋を開業したそうです。

 「何も知識がないのに始めるわけですが、自分の手の内を親切に教えてくれる人なんていないじゃないですか、試行錯誤しながら自分で研究しやっていたそうですよ。祖父は自分が生まれる頃には亡くなっていたのですが…」と、現在の代表取締役、三代目石橋正浩氏が話してくれました。同氏は43歳の若き経営者で菓子職人です

店内

 毎日、大釜で手作りされる甘納豆は常時8種類ほどが店頭に並びます。一番人気の「きなこ花豆甘納豆」、季節限定品の栗、芋、岩納豆、新たに商品化したピーナッツなど、新商品の開発も日々研究を続けています。こだわって作る甘納豆は、大釜で炊きあげられた手作りです。店舗奥にある工場には多数の大釜が湯気をあげています。仕込みも行程も全て手作業で5日~7日間は要しますが、ふっくらと炊きあげられた豆の美味しさは、口コミで多くのリピーターを生み、近所の人はもちろん、遠方からこの美味しさを求めわざわざ訪ねてくる来客も後を絶ちません。

 これからは、若い人にも甘納豆の美味しさを知って手に取ってもらえるよう活動したいと同氏は語ります。近年、力を入れているのは贈答品です。パッケージデザインを一新しギフトの需要も増えたそうです。季節ごとの掛け紙には久留米の四季をあしらった風景が描かれ、箱を開けると色とりどりの甘納豆が納められています。

 世代が交代し時代は代わっても、初代が持って創めた情熱を二代目弘成氏が三代目正浩氏が受け継いでいく。パネルのメッセージ『時代は代わっても変わらない』がバトンで繋がって、これからも永らく愛され続ける甘納豆専門店であることを期待しています。

 久留米菓子協同組合事務局・野口登喜子