各地の菓子店探訪
岐阜県菓子店の投稿

コロナに負けない3本柱の構築

新規洋菓子店オープン

プリンセスブランシュ パティスリークラ

 昭和48年、伸光製菓株式会社は4店の和菓子屋により協業組合として発足しました。

 当初は何ごとも順調に運ぶかと思われましたがなかなか安定した取引先が着かず、さらには昭和51年の豪雨による長良川堤防決壊により社屋の2階まで浸水し壊滅的な被害を受けました。

 その後、高度経済成長の波に乗り、顧客の新規開拓を進め、販路を岐阜市内から飛騨高山へも伸ばし、ヒット商品(飛あゆ、栗福餅、枝豆まんじゅう)の開発、その背景には長良川鵜飼観光での集客、中部未来博、大河ドラマ館売店などの追い風もありました。卸売業だけでなく別会社での和菓子小売店を7件展開し安定的な経営ができるようになりました。

 全国から集まる学会、イベントなどへも出店し臨時的な収益も上げてきました。

 しかし新型コロナウイルスが猛威を振るい始め、事態は一変しました。国民への行動制限により観光客は激減どころか顧客である旅館ホテルが休館、観光施設も閉園となり工場も製造調整や臨時休業する事態に陥りました。

 そんな折、社長の長男(藤吉 蔵)が結婚し、修行先より帰ってくることになりました。蔵さんは地元高校食品課を卒業後、辻調理師学校、フランス留学、博多のフランス菓子16区にて洋菓子を学んできました。コロナ禍でも洋菓子店はお家需要で業績が良いと聞いています。

女性客を意識した店内

 ここで蔵さんを会社へ受け入れ、同じような仕事をさせるか、新規に洋菓子店を建て新事業とするのか大きな分岐点となりました。同様の仕事をさせては今までの修行の成果が無駄になるような気が、しかしコロナで打撃を受けた会社にとって新事業、新店舗を建てる経済的な余力は厳しいものがありました。社長は金融機関や商工会議所と相談の上、事業再構築補助金を活用し、新事業着手を決断いたしました。暇な工場を活用し新商品の試作が始まりました。今までとは違う材料、機材を使い既存の包装機、包餡機も活用できます。

 卸売りで経験した事、小売り和菓子店で培ったものを集約し新店舗は高級洋菓子店とし、小さなお店、少ない集客でも利益の出るような工夫をするように考えました。

 2022年4月新店舗工事着工しました。毎週現場事務所にてミーティングを行い壁の色や設備について打ち合わせを行いました。装飾のシャンデリアや客席の椅子を見に大阪へも出張しました。手付金や工事費途中支払いなどお金に羽が生えて飛んでいきました。

 プリンセスのお茶会をテーマに白を基調とし、お客様はほとんど女性であるということでトイレも華やかに、前室にドレスルームも設けました。シャンデリアも2基吊るし吹き抜けの天井としました。ゆっくりお菓子とお茶を楽しむために貸し切りのプリンセスルームも設けました。

 2022年9月30日、新店舗「プリンセスブランシュ パティスリークラ」がオープンしました。土地面積300坪、建坪50坪ほどの小さなお店です。製造は蔵さん、蔵さんの奥さん、スタッフ1名、調理場の広さからこれが限界です。フロアースタッフは2名、最大5名での展開になります。

 今までの新規オープンには新聞広告を入れ大々的に宣伝して集客して大騒ぎのうちにオープン3日間を終えるような展開でしたがお金をかけて苦労を買っているようなものと思い、今回はそのようなことは致しませんでした。

 オープン3日前より上下白衣、コック帽の蔵さんがご近所を1件1件、オープンのご案内を挨拶して回りました。

 開店前に並んでいただいたお客様に対し蔵さんが御礼とご挨拶をしていよいよオープンです。特別な日も、平時もスタッフ最大5名で回せるようにと思い店づくりをしてきました。

 メニューは和栗のショートケーキ、モンブラン、これらは本家が栗きんとんを作っているので得意分野です。シャインマスカット、巨峰、飛騨リンゴ秋映(あきばえ)など季節の果物を使った洋菓子をラインナップしました。

 現在は喫茶コーナーでアフタヌーンティーセット、ケーキセット、近くには銅鍋で焼いたパンケーキセットも用意してお客様に楽しんでいただくようです。貸し切りのプリンセスルームではお子様の誕生日パーティーなどの需要もありました。

 新型コロナウイルスにより大打撃を受けた伸光製菓株式会社ではありますが小さいながらも新事業に活路を見出せそうです。今後は卸売り(旅館ホテル売店、駅売店、量販店、生協)、和菓子の小売店(5店舗)と洋菓子店1店、それらを統括したSNSでの発信がTV、ラジオ、新聞などで取り上げられることでさらなる売上UPにつなげています。

 岐阜県菓子工業組合副理事長・藤吉一郎

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