各地の菓子店探訪
和歌山県菓子店の投稿

雲水つりがねまんじゅう

伝統と革新を両立した新しい展開

つりがねまんじゅう断面

 和歌山県最古の寺「道成寺」は1300年の歴史ある御坊・日高地方の名刹です。道成寺では、約1100年前より伝わる「安珍・清姫」伝説を日本唯一と言われる絵巻を使った住職による絵解き説法が毎日行われています。伝説では奥州白河(福島県白河市)より来た「安珍」と紀伊真砂(和歌山県中辺路)の「清姫」との悲哀物語で、クライマックスでは蛇に化けた清姫が道成寺の釣鐘に隠れた安珍を釣鐘ごと焼いてしまう物語です。その後の釣鐘にまつわるお話が歌舞伎「娘道成寺」や能「鐘巻」浄瑠璃「日高川入相花王」など、古典芸能の道成寺のものとして現在に伝わります。道成寺門前で創業110年の当店では、道成寺に伝わる釣鐘伝説に因んで約60年前より「つりがねまんじゅう」を製造販売し、観光客や地元のお客様に御贔屓にして頂いています。「つりがねまんじゅう」は、釣鐘型のカステラ生地に黒餡と白餡が入った焼菓子です。伝統的な黒餡、白餡に加え、近年では春の桜餡、夏の柚子餡、秋の栗餡と季節に応じた季節餡が出来ました。また、昨年には釣鐘饅頭製造60周年として新たに「釣鐘BLACK」を新発売いたしました。炭焼き等で知られる紀州備長炭はここ和歌山県日高川町が生産量日本一です。

6ケ入り 800円/10ケ1300円/BLACK 5ケ 800円

 紀州備長炭をパウダー状にしたものを生地に練り込み漆黒の黒カステラを仕上げます。紀州備長炭は整腸作用や美肌効果があるといわれ現在では多くの食品に使用されています。地元和歌山県日高川町の地域資源を使い、道成寺で清姫が釣鐘を焼いたストーリー性を持たせた真っ黒な釣鐘BLACKです。

店内風景

 パッケージは近年では広く採用される黒色を全体に配色し、オリジナリティとインパクトのある見た目にもこだわりました。売店は能舞台風の真っ黒な松画黑絵を壁面に描き、和モダン風に店舗改装しました。伝統と革新。古き良きものは引き継ぎ、今後も時代に応じた新しい展開を目指していきたく考えます。

本文提供「雲水」黒田量也氏

発信人:和歌山県菓子工業組合事務局・高橋義明