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時間つぶしにお菓子にまつわる本でも

おいしいアンソロジー おやつ

 本好きの一人である。果然、書店に行っては、書棚に目を走らせていることが多い。興味があるのは、「オタク」並みに極々限られたジャンルの物でしかないが、商売柄、本のタイトルに「お菓子」とか「スイーツ」などの単語が入っていると、やはり気になって手に取ることはある。普段、買うまではいかないが、そんな筆者が最近、買い求めて読んだ本を2冊紹介したい。2点とも文庫本で、新刊書ではなく、初出もかなり前なので「何を今頃…」という方々にはご容赦願いたい。

 一冊目は、「おいしいアンソロジー おやつ」 (阿川佐和子他 だいわ文庫)各界の著名人43人が各々,色々なお菓子やおやつについての思い出や思い入れなどについて綴ったエッセイを一冊の本にまとめたものである。一篇4~5ページ程度のおもしろい話がちりばめられていてどこからでもサッと読めてしまう。人々がお菓子に対して抱く思いが伝わってきて、菓子を作る側の者として、いろいろな点で再認識させられた気持ちである。

和菓子のアン

 2冊目は、「和菓子のアン」(坂木司著 光文社文庫)

 主人公は、大学進学を諦め、といって将来に何のビジョンも持てない「いちご大福」を人間にしたような女子高生。たまたまデパ地下の和菓子店でアルバイトをすることになって、そこでクセのある店長や上司、はたまた次々と現れるお客たちとの出来事や事件を店で扱う色とりどりの和菓子の紹介やうんちくを絡めながら軽いユーモアとミステリ仕立てで話が展開していく。タイトルはもちろん「赤毛のアン」のもじり(主人公の名前が杏子から)。

 和菓子がとっても食べたくなってくる、気持ちの優しくなるお話である。ちなみに続編のタイトルはやはり「アンの青春」。

 2点ともあまり本を読まない人にもお勧めの、時間つぶしに最適な肩の凝らない本である。

 大阪府菓子工業組合副理事長・中野幹

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