各地の菓子店探訪
青森県菓子店の投稿

下北銘菓 あんどわん

五十年前から看板商品

あんどわん

 現在私は、人口6万人にも満たない青森県むつ市で和菓子屋を構えております。

 私の幼少期には和洋菓子店として商売しておりまして、どちらかと言えば洋菓子の方がメインだったような気がします。

 熱心に商品開発をする父の姿を見て育ち、いつしか菓子の道を志すようになり、高校卒業後、東京世田谷区の菓子店で3年半ほど修行させて頂きました。その後地元に帰り、父と母と共に「地域に根付いた店」を目標に頑張ってきました。

 私の父が商品開発した「下北銘菓 あんどわん」というお菓子があります。名前の由来は、斧形をした下北半島の刃と柄の接する部分がむつ市で、その陸奥湾側最奥部(大湊湾)は天然の良港であり、さらに砂洲の芦崎が南西から北東に向けて海に突出して、昔は安堵湾と呼ばれた入り江を作っています。津軽の深浦(現深浦町)の古名と言われる安東浦や、岩手県大槌湾の安渡(現大槌町)、奈良県の安堵村など、「あんど」の地名はあちこちにあるそうですが、地元では地名の由来を貴人(源義経ともいう)が逃れてきて穏やかな入り江に「安堵した」とか、近江商人達が荒い海を乗り越えて陸奥湾まで来ると、波が穏やかで安心して航海が出来ることから「安堵する湾」、「安堵湾」と呼ばれたなどと言われており、そこから名前をつけたそうです。

 商品の方は、鶏卵をたっぷりと使用した黄味あんを、バターたっぷりのカステラ生地でサンドしたホイル焼きです。しっとりとした優しい味わいで、考案当初の五十年前から当店の看板商品となっております。

安堵湾

 最近では材料等の仕入れ価格の高騰や、売り上げの減少など、多くの課題に直面しています。問題は山積ですが、これからも地元の特産品や地域の特色などを活かした商品づくりに益々精進してまいりたいと考えております。日々お客様に支えられている事に感謝し、一人でも多くの方々にお菓子で笑顔を作れるよう、地域の人々に喜んでいただけるよう、これからも努力し、お菓子作りを続けていきたいと思います。

 青森県菓子工業組合むつ下北支部・和菓子処やすだ・安田健一