歴史を紡ぐ
~コロナ禍を超えて~
私が5代目をつとめております「おきな屋」は、青森市で大正7年(1918)に創業し、当初は団子や大福を製造販売しておりましたが、遊び心のある3代目の頃より青森の産品、特に「りんご」を使用した菓子を作り始めまして今日に至ります。
本年は規制のない「青森ねぶた祭」が開催され、幸い天候にも恵まれたことあり祭期間中(8月2日~8月7日)101万人の人出(青森ねぶた祭実行員会発表)となり、コロナ禍以前の賑わいが戻りつつあることを感じられました。
思い返しますと、3年前の2020年1月15日に国内で初めてのコロナ感染者が確認されて以降、国内はもとより、世界的にも大混乱を引き起こし、弊社も一時は売り上げが半減するなど、先行きを見通すことのできない日々を過ごしておりましたが、こうして今日の日常を取り戻しつつある現状を見ておりますと、改めまして、初代、2代目、3代目、4代目の先人たちが幾多の困難を乗り越えて百余年の歴史を紡いできた「おきな屋」の看板をこれからも永きに亘り守り続けることの重責を感じております。
創業当初は、青森市の新町商店街に住居兼店舗を構え、「地域のお客様」に支えられながら商売を続けておりましたが、時代の変化とニーズにお応え致しまして、徐々に「お土産品」や「卸売り」の比重が多くなっておりました。
そこに「コロナ禍」です、先程記しました通り、売り上げが半減、失われた売り上げは時代のニーズに応えた「お土産品」「卸売り」でございました。
そんな中、弊社を支えてくださったのは創業当初から連綿と続く「地域のお客様」でございました。
「コロナ禍」で外出の制限などがある中で、自家需要としまして、弊社創業以来販売しております、串団子や豆大福、昭和40年代より始めたケーキやアップルパイなどを地域のお客様にご購入いただきながら、なんとか今日まで商売を続けさせていただいております。
奇しくもこの「コロナ禍」で創業当初の原点に立ち返ることが出来ましたことは、先人たちの戒めなのかもしれません。
これからも「地域のお客様」に支えていただける商品、店づくりに励んでまいり、「地域のお客様」に組合事業等を通じて、ご恩返しできる企業づくりをする。
このことを一番大切にしながら進んでいくことが、「おきな屋」の看板を守り続けることに繋がっていくと信じております。
青森県菓子工業組合理事・株式会社翁屋代表取締役・阿部淳之輔