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「月の雫」

山梨の伝統名菓を今に伝える

月の雫

 「月の雫」と言うお菓子をご存知でしょうか? 山梨の野生種・甲州ぶどう一粒一粒を糖蜜でコーティングした、山梨に古くから伝わる手作りの季節限定菓子です。起源については享保8年と明治10年の2説あるようですが、いずれも甲州の和菓子職人が砂糖を煮ていた鍋に偶然甲州ぶどうが落ちてできたと言われています。美しい命名はぶどうが月の光を吸って育つと言う伝承がもとになっているとも言われています。

 1938年創業・株式会社甲州屋本店は古くから月の雫を製造。初代会長若月幸男が甲府商工会議所に働きかけ「月の雫保存会」を発足、「月の雫」を山梨土産として広めて参りました。現在も伝統の独自の糖蜜で製造し続け、サービスエリア、県内観光地売店、首都圏の大手スーパー、イベントなどに納めさせて頂いております。

 金箔の月の雫の文字が印字された甲州屋本店の「青い箱の月の雫」になつかしい味を求めるお客様は多く、毎年9月〜11月はこの菓子の製造と納品に追われます。

 月の雫は丸ごと1粒を口に入れて食します。噛み砕いた瞬間に生ぶどう果汁の酸味とカリッとした糖蜜の甘さがひとつになります。他にはない食感と自然の美味しさがこの菓子が長く愛されている所以です。更には、酸phが高く皮が厚い甲州ぶどうだけが月の雫になり日持ちもすることから、山梨の伝統名菓として定着したものと考えられます。

 砂糖が高級であった昔は糖蜜を厚くかけたものが月の雫のイメージでした。弊社では糖蜜を薄掛けにし、ホームページ・SNS発信で新たな顧客層にもこの菓子を発信、さまざまな年代のお客様から喜びの声を頂戴することがモチベーションとなっています。

 1年のうち2ヶ月程の製造のため、毎年準備期は新たに工場を一つ作るような大変さです。製造所の維持、人員の保持、更には生食に対応した甲州ぶどうの確保などクリアしなくては進めない課題は毎年ありますが、製造に入った途端社内一丸となりご注文に対応します。手作業の上、熟練の職人でも糖蜜の火加減には技術を要しますが、それだけに美しい月の雫が仕上がった時の喜びはひとしおです。

土産品会長賞

 食通であった正岡子規が諸国の名物のひとつに記した「甲州の月の雫」。この郷土菓子の数少ない製造卸元として、甲州屋本店の伝統を継承しながらも時代に柔軟に対応する姿勢を保つことが大切と考えております。その中で「月の雫」を始め山梨土産菓子を今に伝えつつ、微力ながら山梨の観光に貢献して参りたいと存じます。

 山梨県菓子工業組合・㈱甲州屋本店・代表取締役・藤原紀代美

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