4年ぶり岡山後楽園で大茶会
約2500人が集い西日本最大級
中国・宋から喫茶の風習を伝え、茶祖と仰がれる臨済宗の開祖・栄西(岡山市出身)をたたえる「第78回栄西禅師賛仰献茶式・大茶会」が4月24日後楽園で開かれました。新型コロナウイルス禍で中止が続き、2019年以来4年ぶり、令和に入って初の開催。春の名園に会した茶道愛好者や観光客ら約2500人が集う西日本最大級の茶会となりました。
能舞台で献茶式があり、速水流家元・速水宗燕宗匠が風格あるお点前を披露。臨済宗健仁寺派の小堀康巌老大師が栄西をまつる祭壇に茶をささげて読経をしました。
鶴鳴館など園内7か所に表千家、裏千家、武者小路千家、藪内流、速水流の茶道5流派と煎茶・東阿部流による茶席を特設。華やかな着物姿の来園者が次々に訪れ茶道具や菓子など趣向を凝らしたもてなしに心を和ませました。
岡山の菓子としては表千家、裏千家青年部学校茶道連絡会、東阿部流に「みづゑ製」が。武者小路千家に「芭蕉庵製」が。藪内流に「松濤園製」が。それぞれ採択されました。
表千家では坂本宗宏席主により爽やかな新緑を表現したいという依頼があり、上用で緑色餡を包み織部風に木々の焼き印を押し、割ると中から新緑が現れるという趣向で「銘芽柳」という菓銘が付けられました。東阿部流岡山支部からは桜が散り、春の盛りを過ぎたころに花をつける山吹を色合いで表現したいという依頼があり、浮島と羊羹を使った菓子で「水山吹」という銘が付けられました。裏千家学校連絡会からはこれからの若い人への茶道の普及をより進めたいという意向できれいで可愛いお花のお菓子を作ってほしいという依頼があり、二色に張り合わせた薯蕷練切でこしあんを三方から包み上げて「あやめ」を表現しました。
茶席の菓子は道具、季節、場面との調和を取ることが重要で、なおかつ想像をかきたてるよう抽象的なものが要求されるもので、各席主の苦心がしのばれました。
各茶席を美しい着物姿の女性や家族連れが巡り、毎回訪れていた人達からは「久しぶりの名園での茶会は素晴らしい。ようやく心が晴れました」と声を弾ませていました。
青空の下での野点席は終日満席の人気。席主から、どんな気持ちで今日のお菓子を作っていただいたかの説明をうけ、祖母と訪れていた子供たちからは「私はおいしいお菓子が目当でおばあちゃんに付いてきたけど、お菓子にはおもてなしのいろいろな気持ちや意味が込められているんだ。それを聞くとより和菓子が好きになりました」と喜んでいました。
茶会は菓子が足りなくなるほどの大盛況のうちに終わりましたが、おもてなしの場面での菓子の持つ意味、役割を感じつつ、今後とも心を込めその場面に合った菓子作りをしていかねばならないと思いました。
岡山県菓子工業組合理事長・宮武孝昭