各地の菓子店探訪
秋田県菓子店の投稿

吉野屋菓子舗

北限のいちじく

吉野屋菓子舗

 吉野屋菓子舗は商品の9割がいちじくのお菓子です。そのうちの「いちじく・オ・アマンド」は地元のお客様に愛されてまいりました。アーモンドの香ばしい風味広がる焼き菓子の中にいちじくジャムをサンドしたお菓子です。発売以来32年ものロングセラーとなっております。いちじく・オ・アマンドはじめ、いちじくの甘露煮やジャム、パウンドケーキ、最中、羊羹など、いちじくにこだわる理由には祖父の代から続く熱い思いがあります。

いちじく甘露煮

 昭和2年創業の弊社は、戦争の時代を経て初代の祖父が昭和30年前後に近隣の菓子店主に声をかけ、いちじく甘露煮の研究をはじめました。古くからいちじくは弊社のある由利本荘市石脇地区を含め鳥海山麓一帯の民家で庭木として栽培され季節を楽しめる果物として、各家庭で甘露煮が作られていました。しかし、硬くなったり煮崩れたりと甘露煮は作り方が難しい料理です。これをプロの技で仕上げて「地元の名物にしよう」と地域の菓子店主が立ち上がったのでした。そこから独自の製法を編み出し、商品化に成功したのが初代祖父です。

いちじく羊羹

 続いて二代目の父は、いちじく羊羹を開発しました。ならば自分もと考えたのが、いちじく・オ・アマンドです。現在は、数年前から4代目となる息子夫婦と共に祖父、父と守ってきた甘露煮作りに力を入れています。甘露煮の素材は「北限のいちじく」。鳥海山麓で採れる寒さに強い新鮮ないちじく(ホワイトゼノア)を使用しています。収穫期の9〜10月のピーク時には1日200㎏ものいちじくを甘露煮にします。

いちじく・オ・アマンド

 古くから身近な存在であったいちじくは大事な食文化です。いつも支えてくださる地域の皆様やお客様、そして祖父と父の思いを継ぎ、これからもいちじくメインでやっていきます。

 秋田県菓子工業組合 由利本荘支部・吉野屋菓子舗代表・吉野隆樹