各地の菓子店探訪
福島県菓子店の投稿

株式会社 吉田食品

来て楽しいことを期待してもらえる店に

和創菓ひとひらと吉田さん(左)

 福島県は青年部がしばらく活動していなかったらしく青年部に入ったらさっそくブロック長に指名頂き、よくわからないぶんワクワクしています。青年部ブロック長会議では、全体の活動に「全国和菓子甲子園」の他に「若手経営者育成のための経営勉強会」の企画など活性しつつあります。

 今回北海道の函館を選んだ理由は、「経営」の視点でとても独自性のある先輩経営者を思いたったからです。はじめての東北北海道ブロック会議では、はじめましての方々ばかりでした。中でも「菓子博」を控えている北海道青年部長の㈱吉田食品の吉田さんに献身的にいろんなことを教えて下さりお世話になりました。別の機会でも吉田さんには技術講習会などお世話になり、仲良くなると一段とお話が興味深く、SNSの発信なども拝見していると「独自に経営」しているお店にお伺いしたい思いがさらに強くなりました。今回このような機会を頂いたことに感謝します。

和創菓ひとひら併設の吉田食品工場

初の函館(^o^)

 函館は、夜景や朝市も有名ですが、五稜郭があり会津藩とかかわりが深いイメージも強く憧れもありました。同時に地域密着モデルの函館最強B級グルメハンバーガーチェーン「ラッキーピエロ」さんもあること。本を読んでいつか行きたいと願っていても、なんとなく行くタイミングを逃していました。会津若松からは、昼過ぎ出発し新幹線を乗り継いで6時間弱で到着。会津も雪国ですが、さすがの北海道函館の風は冬の寒さを痛感させてくれます。吉田さんと食事の約束前にさっそく「ラッキーピエロ」で甘辛く水分値多めの超名物「チャイニーズチキンバーガー」と家庭的な独自性のある「ハンバーグチーズカレー」で待ち合わせまで胃を落ち着かせました。念願の旨さに感動。食事前におじさん2人で函館山のロープウェイで夜景(笑)寒いと言われていましたがいろんな意味で寒い(笑)。

 夜飯は、海鮮が旨い居酒屋へ。イカが旨い。ジャガイモと塩辛。刺し身もマダラの白子も、みんな旨い。さすがの函館。翌朝は、朝市で海鮮の市場調査。お菓子はその土地の風土や文化が反映されるものと思います。どこかで売れているから同じく売れるというものでもない。地域ごとの習慣や競合他社によってことなります。私は、お菓子屋さんも見学させて頂くと同時にその地域でウケているものにもとても興味が惹かれます。

吉田さんへの取材質問まとめてみました。

良いお菓子とは?

「生地とのバランスとコンセプトを大事にしている。しばらくたって食べると、時間たっても水分移行考えているもの。食感や切れ味も大切。美味しいと思ったあとの余韻の切れ具合、餡も渋みとえぐみももちつつ、どこに焦点を設計しているか?意図が感じとれるお菓子がいい。毎日餡も試食し分析記録。色?味?硬さ?次の日に餡が落ち着くから糖度と水分測る」

 コンテストは傾向と対策の準備の大切さを学びました。

技術コンテスト「金賞」

 菓子博の準備にての意気込みやご苦労話では、往復900キロかけて会議しているとの話だけで気合を感じました。

創業から今までの経緯も伺いました。

「祖父が創業。お菓子しかやっていないけど吉田食品という社名のまま。父は、大卒後は薬の訪問販売。30才で帰ってきてパンと洋菓子の店を別の場所で開業し成功。

 吉田さんが修業終えて30才で帰ってきたとき、誰でもできる機械仕事の現状に愕然とした。「卸屋」としてのみられかたが低く悔しかった。新しいものやろうとしても受け入れられない。地域でウケる味もまだ理解していなかった。職人だと人にモノ教えたくないみたいな古い風習など。技術の育成や継続するための標準化するマニュアルを作ろうとした。時間内に成果を出す仕組みにも注力。まずは商品を安定させることを最優先」。

影響を受けた3つの出来事はありましたか?

「①修行から帰ってきて自由にできると思ったけどできなかった。人にもうまく伝わらないし、後継者なんてなるもんじゃないとあきらめた時期もあった。②経理も経営もわかっていなかった自分に気づく。菓子屋は菓子作っているだけではダメだと思った。将来を考えたとのこと。経費削ることから始め、規律も正すことで3年で黒字化。③30才菓子博熊本大会で工芸の素晴らしさに圧倒されたが、独学で試作するもうまくいかず。34才、菓子博姫路大会で、もう一回よく見ようと写真をとりまくる。出品しないとスタートラインに立てないと思い、作品を作る他の人と知り合いになれるかもと思い、その時期に知り合ったのが「ことよ」(三重県)の岡本さんだった。北海道からは出品無理と皆に言われたが、38才で菓子博広島大会に車に作品を積みフェリーで京都経由で自走運搬し出品。いろんな情報ネットワークが広がったそうで、大阪二六会の西尾会長にもとてもよくしてもらったご縁もあった」

影響を受けた2人の人物は?

「祖父はもの作りの憧れの対象であった。父は、自然から学ぶ自由な発想の影響。小学3年の時、お年玉でゲームソフトと盆栽を買った思い出から、工芸菓子への感覚の興味の原点を振り返った」
人生の大きなひとつの決断は?

「30才、修行しているとき帰るか?帰らないか?の決断したとき。次行く店も決めていて、そのまま東京にいても良かった。しかし、函館戻ることで困難との出会いのスタートが早くなれた」

店内風景

 お店にも伺いましたが、お菓子がどれも美味しくこだわりを感じる商品ばかりでした。商品数もありますが、出来立てのこだわりもあれば、日持ちも考えたバランスの良いラインナップでした。
最後にどんな店になりたいですか?と質問しました。

「モノを売るだけでなく、来て楽しいことを期待してもらえるような空間の店を目指している」とのこと。

ちなみに「ひとひら」とは?

「人とのつながりを大切に手のひらで真心込めてお菓子を作るという意味」
 今回のたくさんの取材の質問の中で、私自身もたくさん学びを得ることができました。

 全菓連青年部東北・北海道ブロック長・㈱太郎庵(福島県)・目黒徳幸