これからの菓子屋のあり方

2024.6.17

〜海外からみた和菓子〜

　自分事で恐縮だが、去年の夏に悲願のカフェ併設２店舗目を出店させた。背景には１店舗では終わりたくない、スタッフのためにも挑戦してお店を成長させたいという野望があったからだ。まだオープンして１年も経っておらず、周りからは「調子良さそう」みたいに言われるが、実際はそんなことはなく七転八倒の日々が続いている。１店舗のときにはうまくいっていたのに、いかんせん２店舗になるとうまくいかない。それも念願のカフェが思ったようにいかない。

　「あのお店はどうなんだろう？」自店を差し置いて、ついつい野次馬根性が湧いてしまう（苦笑）　そう…　あのお店とは、今回私の訪問先、愛知県長久手市に２０２３年６月にオープンした「あずき茶屋 by 亀屋芳広」だ。

　亀屋芳広といえば、尾張熱田（名古屋市）近辺では有名だろう。それもそのはず、戦後直後の昭和24年に熱田神宮の門前町にて創業以来、名古屋市内に11店舗、郊外に６店舗、合計17店舗もお店を構える、押しも押されもせぬ地域１番店だ。今回お邪魔した「あずき茶屋」は、そのうちの一つ長久手店をリニューアルオープンさせた、「あん」を中心に扱う亀屋芳広の新業態店になる。

　思えば小生が初めて亀屋芳広を知ったのは今から13年程前、レオン自動機名古屋支店に行った時、「亀屋芳広　地あみ店」が最初だった。当時、弊社は駐車場もなく立地が悪い裏通りの駄菓子屋だったので、輝いて見えたのでよく覚えている。角地で店構えが立派、駐車場が広くて入りやすい。「こんな立派なお店だったらいいなぁ〜」そんなことを思いながら、月日が経ち、この全菓連青年部で花井社長と知り合うこととなり、今回の訪問に繋がった。まさにご縁である。

　規模は全く違うが、ほぼ同時期にオープンした和カフェということで、実は勝手にお手本として注目させてもらっていた。メニューの作り込みもしっかりしているし、外観も内装もオシャレで綺麗、何しろ「あずき茶屋」っていう店名も和菓子屋らしくて潔く気持ちいい。

　今回、実際に訪問させていただいてわかったのだが、やはりこのお店も角地にあり、そして駐車場が広い（19台）、なので車が止めやすい。この辺りは多店舗化する時の一つのコツのようなものだと思う。店舗によって立地や駐車場の数、売り場面積などが違うと、それぞれに独自のルールを設けなくてはいけなくなり、オペレーションが複雑になる。そうすると目が届かなくなり、どこかにムリ、ムダ、ムラができ、結果として運営が思うようにいかない（今回の私のように…汗）

　地方の路面店、特にカフェをやっていると、駐車場の台数で売上が決まってしまうので、この辺りもさすがとしか言いようがない。リニューアルとはいえ、駐車場の舗装もやり直したのだろう、バリアフリーの綺麗なエントランスを通り、店内に入ると右手に物販エリア、左手にカフェエリア（テラス席あり）そして正面にはお団子や大福などの朝生菓子が大皿で陳列されている。基本グレーと白木を基調とした店内はすっきりとまとまっており、和菓子屋なのにどことなく北欧をイメージさせる飽きがこないデザインになっている。カフェは席を確保してから、カウンターに注文し、できたら取りに行くスタバ式のオペレーション。これも今風だろう。頼んだのは1番人気だという「団子プレート」と期間限定の「和パフェ」、注文後目の前でお団子を焼き上げたり、パフェを組み上げる様子が見え、女性でなくても、胸が躍る。ゆったりとした店内でいただく出来立ての和菓子とお茶をいただくと、改めて日本人でよかったと感動し、老舗が手掛ける新しいスタイルのカフェ業態、作ってくれてありがとうと思ってしまう（笑）そんなチャレンジし続ける花井社長（44歳）だが、きくとかなり異色の経歴で、大学も初就職もなんとアメリカのＬ．Ａ。当初は全く菓子業界に興味なかったが、ある日、アメリカで和菓子の製造販売にチャレンジしている某社長に出会って、「和菓子には国境を超えた可能性があると」家業を継いでみようと決意したらしい。地元では実直な地域密着型のドミナント経営をされながら、しっかりとワールドワイドな視点で将来を見据えてられる社長の実直なお話を聞いているうちに、これからの国境を超えた和菓子屋のあり方が見えた気がした。

　全菓連青年部中部ブロック長・竹内信二

店舗データ

亀屋芳広

本　　店
住　　所：名古屋市熱田区伝馬1-4-7
電　　話：052-682-0025
定 休 日：なし（元旦を除く）
営業時間：8:30-19:00　［日祝］8:30-18:00

支　　店
営業時間：9:00-19:00　［日祝］9:00-18:00