各地の菓子店探訪
長野県菓子店の投稿

信州飯田の風土が育んだ、伝統と革新が融合する菓房

南信州丸ごとりんごパイ

 大正6年創業の「有限会社田月」信州飯田の菓房は、現在4代目で信州飯田にその歴史を刻む老舗の和菓子店です。南信州の豊かな自然と人々の温かさが育んだ伝統の味を守りながら、現代食文化に合わせた新しいお菓子作りにも挑戦し続けています。

1、歴史と伝統の味

 大正時代より菓子作りを続けてきた田月は、飯田市の花街の入口で菓子屋を始めたのが始まりです。それ以来地域の人々に長く愛され続けてきました。昔ながらの製法を守り、素材本来の味を最大限に引き出した和菓子は、口にした瞬間に心が温まるような懐かしさと新しさが調和した味わいを目標にしています。特に創業以来作り続けられている正月菓子「初ゆめ」は、地元の人々だけでなく遠方から訪れるお客様からも愛されています。また、この地域のソールフードとも言われる「赤飯饅頭」は、慶事や日常のおやつとして親しまれています。もちもちとした食感と、ほんのり甘い赤飯の風味が絶妙です。

2、信州の四季を彩るお菓子

 田月は、信州の四季折々の美しい風景や、地元で採れた新鮮フルーツを使用したお菓子作りにも力を入れています。一年を通じて作られ季節ごとに変わる創作大福「みんなの大福」は、春には桜の開花を祝うような華やかな「さくら大福」、夏には涼しげな見た目の「ぶどう大福」、秋には栗や芋を使った風味豊かな「モンブラン大福」、冬には雪景色をイメージした白くて美しい「いちご大福」など、その他にも多数の大福餅で一年を通して様々な種類を楽しむことができます。

田月

3、現代の食文化に合わせた新しい挑戦

 伝統を守りながらも、田月は常に新しいことに挑戦し続けています。例えば、地元産のフルーツを使ったパイやどら焼き、地元高校とのコラボレーションなど時代のニーズに合わせた商品展開を行っています。また、若年層のお客様を呼び込むテイクアウトスタイルの「わらび餅ラテ」や、通販事業でのオンラインショップやふるさと納税などにより多くの人々に田月の味を届ける取り組みも進めています。

4、お体験教室

 田月では、練り切りの体験教室を随時開催しており、県内外の多くの人々に和菓子の魅力を伝えています。実際に職人さんの手によってお菓子が作られる様子を見学して、一緒に自分自身で和菓子を作ってみたりすることで、より一層和菓子への理解を深めることができます。最近はインバウンドのお客様も来て頂けるようになり、より一層体験型の店舗へとシフトしていく予定です。

店内

5、地域とのつながり

 田月は、地元の産物を使ったお菓子作りを通じて、地域経済の活性化にも貢献しています。地元の農家から直接仕入れた新鮮なフルーツや、地元の素材にこだわったお菓子作りは、地域の人々との強い絆を生み出しています。また、地域の小学校や中学高校のキャリヤ教育にも多数参加して菓子業界の夢のある話と現在の課題を子どもたちに話したり、お菓子教室を授業でやったりと、お菓子づくりの楽しさを子どもたちに伝えております。

まとめ

 有限会社田月は、信州飯田の風土が育んだ、伝統と革新が融合する菓房です。昔ながらの味を守りながら、常に新しいことに挑戦し続ける田月の和菓子は、地元と観光に焦点をあて菓子を売るではなく、お客様の笑顔をどれだけ集められるかを実践しています。スタッフ一人一人が笑顔づくりを目標に活動しています。南信州を訪れた際には、ぜひ一度田月に遊びにきてください。

 長野県菓子工業組合飯田下伊那支部・城田茂(㈲田月)