150年に向けて
若い人が働ける環境を 吹上堂
山口県宇部市は、瀬戸内の温暖な気候と豊かで美しい自然に育まれたまちで、代表するお菓子は千利休に由来を持つ一口サイズの蒸し饅頭で、100年の歴史を有するものです。
今回ご紹介するのは「利休さん」で広く知られる創業103年の吹上堂、初代粟屋実氏の暖簾を継いだ3代目粟屋光氏です。3代目になり、より原材料にこだわり代々受け継いできた味を伝統の技法で作り上げています。

会社で最初に始めたのはラインの効率化です。長時間労働では生産性が低下してしまいます。先代の頃とは時代が移り、企業コンプライアンス遵守への姿勢を示す必要も感じたことから、若い人が働ける環境を整え、選ばれる職業となるよう休日出勤、残業ゼロを目指しました。また原材料も見直し、宇部市の米どころ吉部産の米粉、小麦粉は山口県産としました。シンプルな商品なので素材のよさから生まれる製品の味にはこだわります。その努力は、販売促進及び販路拡大に意欲的で市場評価を得ている製品として認証される「うべ元気ブランド・ゴールド」に選ばれました。また2024年7月にはJAPANFOODSELECTIONグランプリを受賞しました。
最近では宇部市が行っている「まちじゅうエヴァンゲリオン」に参加し、利休さんを特別に製作した箱に入れエントリープラグ利休さん(零号機、仮設5号機、ダミープラグ、2号機、初号機)として販売しています。5種類それぞれ異なる餡を入れ、プラグ型の箱に入れていますが、若い顧客が増えただけでなく、その箱はフリマサイトで販売されるほど。3代目のオタク心をくすぐる仕掛けが生きた瞬間です。3代目もエヴァンゲリオンファンとのことで、店内のディスプレイもエヴァ風に斬新にして老舗の風格に彩りを添えます。
また、複雑化する顧客の支払い方法に対応するためIT補助金を申請し成果をあげています。そのほか、売り上げの多くを占める卸部門については返品欠品のバランスを考えて、自らデータに基づいて卸先と交渉を進めることで利益率の改善に努めています。
これからは菓子屋同士連携をして老人施設でふるまう、旅館のお菓子として提供し観光客に知ってもらう、給食で食べてもらうなどの機会を増やし地元銘菓に親しんでほしいと思っています。さらなる可能性を信じて、地元の農産品を取り入れた変わり餡の利休さんを作り、バリエーションを増やしていきたいと考えています。
山口県菓子工業組合事務局・安光このみ
店舗データ

有限会社 吹上堂
住所 宇部市中央町二丁目2-1
TEL 0836-31-1012