昭和の時代を駆け抜けた「昭和堂」
笑顔になる菓子作りを
昭和五十年代まで鉱山の町として栄えた旧柵原町(現在美咲町)で昭和の初めに創業した「昭和堂」は、令和元年、四代目(鈴鹿博之)に承継される以前から九十年余り続いた菓子屋です。

和菓子はもちろん、ケーキ、パン、駄菓子と幅広く商いをしておりました。その昔は鉱山従事者で大変な賑わいのある町で、生徒数も多く、町内の学校給食のパンも一手に引き受けておりました。小さい町ながら、通りを行きかう人々の声でいつも活気づいていました。
しかし、鉱山町の宿命ですね、鉱山の閉山に伴い人口はどんどん減っていきました。昭和堂の従業員も徐々に減っていき、お菓子の種類も少なくなり、今では四代目社長夫婦と母と三人の、二人三脚でお客様に支えられながら店を続けさせていただいています。

二代目が考案した代表銘菓「石の華」は採掘される鉱石に因んで創製された和菓子ですが、地元のお客様や県外からのお客様にも愛され続けている店の看板商品です。この商品だけは作り続けてほしいと初代(鈴鹿光次)の願いでもありました。四代目の事業承継と結婚をきっかけにしばらく止めていたパンの製造を始めることになりました。

丁度コロナ感染に飲み込まれ始めた頃で今までの生活が、すっかり変わってしまって先の見えない不安でいっぱいでしたが、パンの販売のおかげで売り上げも少しずつ上がっていき、有難いことに新規のお客様も増えていったのです。又町内で和菓子製造販売をしているのが唯一、当店一軒だった事もあり、金融機関からの支援も受けて大変助けになりました。

令和五年一月フランスのリヨンで開催された、洋菓子の世界大会【クープデュモンド・ドゥ・ラ・パティスリー】に於いて四代目社長の実弟(鈴鹿成年)が日本代表に選ばれ見事優勝することが出来た事も大いに励みになりました。家族の喜びはもちろんですが、町を挙げて皆様に祝福をしていただき大変光栄でした。お客様とも、喜びを分かち合うことが出来、以前にも増して昭和堂に親近感を持っていただいたようです。お客様があっての商売です。今年で四十歳の四代目ですが、夫婦力を合わせて、若さと情熱でこれからもお客様の笑顔を励みに、変わらぬ味と喜ばれる菓子作りを続けていきます。辺鄙な田舎町ですが、お通りの節には是非お立ち寄りください。三代目が笑顔でお待ちしております。
岡山県菓子工業組合・有限会社昭和堂取締役・鈴鹿範子