各地の菓子店探訪
福島県菓子店の投稿

玉家玉振堂

二本松から広がる 羊羹の魅力

 玉家玉振堂(たまやぎょくしんどう)は嘉永6年に創業し、福島県二本松市で和菓子を作り続けている店です。

 二本松は「和菓子の町」とも呼ばれるほど和菓子屋さんが多い場所で、最盛期には一つの町に20軒以上のお店があったそうです。今では少なくなりましたが、昔ながらの味を守り続けるお店が今も頑張っています。

玉家の竹皮羊羹

 二本松は、霞ヶ城というお城がある城下町でもあります。江戸時代には和菓子文化が盛んだったといわれています。当店にいらっしゃるお客様からも、「このお店で一番昔から作っているお菓子は何ですか?」とよく聞かれます。そんなときには、玉家で一番古いお菓子として『玉家の竹皮羊羹』をご紹介しています。

 この羊羹は江戸時代から作られており、羊羹を直に竹の皮に包んで販売しています。竹の皮が羊羹の水分を吸って外側が固くなるので、その「シャリシャリ」とした食感が特徴です。この羊羹の歴史は古く、参勤交代の際に献上されたほか、地域の方々にも親しまれてきました。

 玉家では昔から羊羹を看板商品としており、多い時期には8種類もの羊羹を並べていたこともあります。しかし、時代とともに種類は減り、現在では4種類の羊羹を作っています。一時は「羊羹を手に取る方が減ってしまうのではないか」と心配していました。

竹の皮に包んで販売している

 ところが近年は、羊羹を求めて来店されるお客様が増えていると感じます。以前は羊羹を手に取られるのは年配のお客様が中心でしたが、今では若い方やお子様連れのお客様も増え、「羊羹が食べたい!」とご来店くださることが多くなりました。

 羊羹は植物性タンパク質や食物繊維、ポリフェノールといった栄養素が含まれる健康的な和菓子です。また、オリンピック選手がエネルギー補給に羊羹を活用するなど、注目される機会も増えています。そして何よりも、羊羹は和菓子作りの基本である「あんこの味」をしっかり味わえるお菓子です。当店の餡の美味しさをそのまま感じていただける羊羹を、ぜひ楽しんでいただきたいと思っています。

 先日も羊羹を大好きというお客様がご来店くださいました。羊羹についてとても詳しく、旅行に訪れる先々で羊羹をご購入されるそうで、店頭でいろいろな話を聞かせていただきました。当店の羊羹もお買い上げいただき、「感想をお聞きできる日が楽しみだな」と思っています。

 私は和菓子屋の家に生まれ、日常的に羊羹がある生活を送ってきました。そのため、羊羹の魅力に気づかずに過ごしていました。しかし、お客様から「玉家の羊羹は美味しい」と言っていただく中で、その魅力に改めて気づかされました。それ以来、もっと美味しい羊羹を作るにはどうしたらよいかと考えるようになり、日々工夫を重ねています。

 羊羹は鎌倉時代から伝わる、日本を代表する伝統的な和菓子です。この魅力を、二本松という小さな町からたくさんの人にお届けしていけたらと思っています。

 ㈱玉家玉振堂(たまやぎょくしんどう)・渡邉史絵