各地の菓子店探訪
山梨県菓子店の投稿

金精軒製菓

SNSがきっかけで山梨県へ

 山梨県西部の田舎町にて和菓子製造を行っております「金精軒製菓」と申します。当店は、美しい山々に囲まれ、澄んだ空気と名水に恵まれた土地に位置しています。15年ほど前から外国人観光客も増えてきましたが、情報媒体で有名な観光地と比較して重要文化財もなく、何もないように感じていました。

「巳」をモチーフにした上生菓子

 2012年、私たちは新商品の「水信玄餅」を販売開始しました。クリスタルのような透明感のある見た目は、ちょうど旧Twitterが流行りだしたSNSと相性が良く、多くの方に拡散されて注目していただきました。これをきっかけに、人口約4000人の高齢化が進む田舎に若者たちの行列ができ、当時大興奮して喜びました。今では夏の定番商品となっています。あらためて思うことは、当たり前になっていた地域資源の価値を力づけてくれた、水信玄餅を食べたときのお客様の笑顔のおかげだと感じています。

 昨年度は、干支をモチーフにした上生菓子「辰の干支菓子」がSNSで話題となり、県内外から多くのお問い合わせをいただきました。このような嬉しい評価の背景には、SNS担当者の努力があります。当店のSNS担当者は「和菓子に興味のない方にも読んでもらえるよう、思わず笑顔になってしまうような話題作りを心がけている」と話します。和菓子の製造風景や素材の紹介をクスッと笑えるエピソードを交えることで、多くの方の目に留まりやすい発信を続けています。

辰の干支菓子

 2年前から、職人育成の一環として年初めの看板商品となる干支菓子の制作に若手職人を抜擢しました。伝統的な和菓子は侘び寂びのある奥ゆかしい美しさが魅力ですが、あんこを洋風にアレンジしたり、見た目に可愛さや遊び心を加えた、若い職人の感性ならではの菓子が生まれました。その結果、昨年は「可愛すぎる辰の干支菓子」としてネットニュースで取り上げられ、新年早々ありがたいばかりのお客様にご来店いただき、職人のやりがいにもつながりました。中は地元産のラフランスを使用したあん。

 今年、2025年の干支である「巳」をモチーフにした上生菓子は、花鳥風月をテーマにした4種類で構成しました。和菓子を通じて文化の魅力を伝え、大切な家族と一緒に、和菓子を好きになってもらうきっかけになったら嬉しいです。販売開始はこれからですが、お客様に喜んでいただけるかドキドキ、期待しています。

 山梨県菓子工業組合・清水珠央(金精軒製菓・経営企画)