鳴門のソウルフード!
ごま砂糖で食べるお赤飯の魅力
鳴門市は四国・徳島県の北東部に位置し、世界的に有名な鳴門の渦潮で知られる地域です。この鳴門地域でお赤飯は、日本全国各地と同様にお祝いの席に欠かせないものとして親しまれていますが、独特な食べ方で市民に愛されています。このユニークな食文化を紹介します。
鳴門市のお赤飯は他の地域と同様にもち米と小豆(ささげではありません)を使用しますが、ごま砂糖をかけるのが最大の特徴です。ごまは白ごま、または金ごまを使用し、煎って少しすりつぶし、砂糖と僅かな塩を混ぜ合わせたもので、ごまの香ばしさと砂糖の甘み、更にはシャリシャリとした砂糖の食感が絶妙に調和して、もち米と小豆のシンプルな味わいを引き立てています。

ごま砂糖のお赤飯がテレビの人気番組で何度も取り上げられたりして、今となっては鳴門地域だけの特殊な食文化であるということを多くの方がご存知ですが、昔はこれが全国共通の一般的な食べ方であると勘違いしている鳴門市民がほとんどでした。今ではマスメディアで知り、鳴門地域以外から怖いもの食べたさでわざわざお越しくださるお客様もいらっしゃいます。そして実際に食べてみたら美味しい美味しいと、ごま砂糖沼にハマってしまう犠牲者続出中です。またごま塩と違って、たくさんかけても美味しく食べられるので、ごま砂糖を追加購入されるお客様もいらっしゃいますし、特別な日だけではなく日常的な主食としてもご利用いただいています。
鳴門地域では何故、お赤飯にごま砂糖をかけるのでしょうか。諸説ありますが、鳴門は昔から塩田による製塩業が盛んでした。つまり塩は割と身近なものであり、ありふれたものだったのかもしれません。それでハレの日やお祝いの席で食するお赤飯には、より高価な砂糖を使ったのだろう、というのが現在では有力な起源説となっています。近隣に阿波和三盆糖の生産地域があるということも関係しているかもしれません。
ただ、塩田で栄えた地域は全国各地にありますが、ごま砂糖は鳴門地域だけ。甘納豆を使ったりして赤飯自体が甘いところも一部にあると聞きますが、いずれも塩田との相関関係はなさそうです。それで個人的には、塩田の影響だけではなく、ただ単に甘い物好きだったという要因も大きいのではないかと思ったりもします。実は鳴門に限らず徳島県では、お好み焼きやちらし寿司に甘い金時豆を入れるのも定番となっていて、そういった甘い物好きな食生活の影響なのか、過去30年の間に20回以上「糖尿病死亡率全国ワースト1位」という不名誉な記録が残っています。
なので糖分の摂りすぎには十分注意する必要がありますが、鳴門のお赤飯は地域の人々の生活に根ざした、特別な逸品です。ご来鳴の際は、是非一度ごま砂糖赤飯を味わってみてください。きっとその独特の風味と食感をお気に召すでしょう。
徳島県菓子工業組合専務理事・福岡賢治