異業種との協業と文化への貢献

その地域のお土産をはじめとして、地元の食材や加工品を生かしたお菓子というものは昔から作られ、現代においては今まで以上に注目されているかと思います。群馬県内のお店でも、苺のやよいひめを筆頭に群馬県産の様々な農作物を使用したり、地元企業の加工品を使用したりと活発な商品開発が行われているように思います。中には郷土のお菓子である「焼きまんじゅう」のたれを使った全く異なるお菓子なども生まれています。
今回はそういった協業とは方向性を変えて、当店、御菓子司新妻屋で実施している和菓子屋と縁の深い茶道との協業をご紹介いたします。
もう数年経ちましたが、コロナ禍ではあらゆる業種で思うような活動ができませんでした。それは茶道も同様で、茶道具を作る作家先生方も個展の開催が出来ない状況がございました。
そんな中で当店の五代目とちょうど同世代の京都の作家の方とアイディアを持ち寄り、お菓子は器に合うように、器はお菓子に合うようにお互いに意識してセットで販売を実施することにいたしました。当店としても初の試みでしたが、ご自宅でお茶とお菓子を楽しく召し上がっていただきたいという思いで準備を進めておりました。試作をお互いに送り合い、お客様へもそれぞれご案内をしたりと普段とはまた違う活動もしながら半年近くかかりました。

無事販売にこぎつけることができ、お客様からも大変反響をいただきました。その後もオンラインながらお菓子作り教室と作家ご自身の講演会をご一緒に開催させていただくなど、非常に広がりのある企画となりました。
以降、当店では年に一度、毎回異なる作家先生や時にはお抹茶屋さんにご協力をいただきながら実施しております。作家先生方はもちろん、お客様にも支えられて本年で5年目を迎えることが出来ました。
開催の都度、新しいお客様に恵まれることも大変ありがたく、また分野は違いますが日本の伝統文化に携わる先生方のものづくりに対するお考えに触れることもでき、お店としても作り手としても充実した企画となっております。
地域に根ざしたお店として、地元の皆さんと一緒に取り組むことも非常に楽しく大切なことであります。新しいことはパワーも必要ですが、昔に比べると遠方の方であっても打ち合わせなどはやりやすくなっていると思います。自店だけでなく、地域や文化に微力ながら貢献していくことができる企画として、今後もコツコツと少しずつ取り組んでいきたいと考えております。
群馬県菓子工業組合副理事長・髙野善明