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「小さなお店」だけれど! 【春の例会】

静岡県菓子工業組合

講師の竹内謙礼氏

 先日、馴染みの床屋さん(理髪店)へ行った。以前は椅子も5台位あり従業員も大勢いて活気のあるお店だったが今は高齢の店主が一人で細々と腕を振るっていた。「もうこの地区ではうちが一軒となり床屋さんもなくなりますよ」と話されていた。菓子店も同じような状況ではないかと思った。

 後継者がなく自分の代で終わりと思っている菓子屋さんが多い。それで本当に良いのか組合も行政も真剣に考えなくてはいけない。様々な業種の個人店(専門店)が姿を消しているがまだその中では菓子屋さんや床屋さんは頑張っている方だ。しかし、そのほとんどが10名以下の零細企業であり組合もこうしたお店のおかげで成り立っている。働き方改革等で益々個人店での後継者難は厳しくなっているが果たしてそうだろうか。『菓名を持つ生菓子』が登録無形文化財として承認された。自分のアイデアが自由に生かされその技術の伝承もできる。地域の小さな商店にはその地域のコミュニティセンター的な役割もある。「あのお店の近所です」とか目印に使われ地域のシンボルとしても役立っている。何といっても一国一城の主である。人脈も沢山できる。人生でこんな幸せなことはない。しかし先にも述べたように個人だけの力では継続が厳しい、そのために組合や行政の後押しが必要になる。会員の相互補助、共存共栄、行政に対し育成、保護を働きかけるのが組合の役割である。現状が進めば組合の存続自体にも影響がでる。継承は同族だけでなくまったく新しい希望者に譲っても良い。日本の貴重な食文化を絶やしてはいけない。

 当組合では「春の例会」(新年会)で講師をお招きして様々な講演会を開催し勉強会を行っている。これまで良い題材であっても「小さな店では無理」だとか「必要ない」など敬遠されがちだった。今年はテーマを「小さな菓子店」に絞って経営コンサルタントの竹内謙礼氏をお招きし「小さな菓子店でも取り組める新規客とファンを増やす販促企画の作り方」について学んだ。先ず、個人店(専門店)の新規客と常連客がなぜ減少したか。スーパーやコンビニ、FC店が躍進し専門店がなぜ苦戦しているかを学んだ。その対策について紙面の都合上縷々(るる)お話できないが「小さなお店がどうすれば良いか」「何ができるか」など資料を見ながら説明を聴いた。特に興味を引いたのは知っている人のお店に買い物に行くというお話。知人・親戚・同級生・地域の役員やサークル仲間等がやっているお店だからなど「知っている人のお店」は売り手の人柄や背景を知っているので多少、条件が悪くても信頼して買いに行く。しかし、これらは時間のかかることで続けることが大事で続けることが商売の基本であると説いている。笑顔の接客、美味しい菓子作り、チラシやSNSの活用、タイミング良いイベント等あげられた。SNSは中途半端な採用は控えるべきとも注意された。受講者の村松氏(吉原菓子組合長)は「お話は自分の店と比較しながら聴いていたので身近な問題として良く理解できた。これまでの営業方針の自信と反省、これからの対策について大いに参考になった」と感想を述べられた。

 小さなお店の強み、メリットは沢山ある。地域の活動など積極的に参加して知っている人を増やすこと、仏事など人生や四季の催事の相談やアドバイスが気軽にできる頼りになるお店作り、コンビニやスーパーではできない商品構成、販売サービスなど方法は幾らでもある。後継者が居ないなど悲観せずに魅力を感じる店づくりに頑張って欲しい。

 「お菓子は絶対無くならない夢のある商売だ」(土井理事長談)

 商売の継続は健全な経営にある。最近の原材料、光熱費、輸送費等の高騰は健全な経営をひどく圧迫している。組合は共に健全で元気な経営ができるような具体的施策を原料、資材関係者共々皆で取り組み存在感を発揮する時だ。それは今でしょ!

 静岡県菓子工業組合顧問理事・森田紀、㈲光来堂

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