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『川越の伝統と技術が融合した工芸菓子を出品』

第28回全国菓子大博覧会・北海道あさひかわ菓子博にて

中野憲幸氏と工芸菓子

 川越市に本社を構える老舗(有)くらづくり本舗が、今年の「第28回全国菓子大博覧会・北海道あさひかわ菓子博」にて、埼玉県菓子工業組合を通して工芸菓子を初出品し来場者の注目を集めた。出品されたのは川越の歴史的象徴ともいえる「時の鐘」・「さつまいも」と、華麗な「牡丹の花」をモチーフにした作品。制作を手がけたのは、2024年6月に入社した中野憲幸氏、次期社長候補の若手職人だ。

 入社以来、彼は技術顧問や製造部長・工場長などのベテラン職人のもとで、和菓子の基礎から徹底的に学んだ。餡の炊き方、原材料の調合、製造手法、細工道具の使い方など日々の業務の中で技術を磨きながら今回の工芸菓子制作に挑戦した。特に工芸菓子は、和菓子の中でも最も高度な技術を要する分野であり、素材の扱い方、色彩の表現、造形の精密さなど、すべてにおいて繊細な感覚が求められる。

 今回の出品作は、約3ヶ月間にわたる製作期間を経て完成。川越の歴史的名所「時の鐘」は、木造の質感や梁の重なり、鐘楼まで細かく雲平で表現されており見る者に川越の風情と郷愁を呼び起こす仕上がりとなっている。一方、「さつまいも」・「牡丹の花」は、餡平で花弁の一枚一枚が薄く繊細に仕上げられ、まるで本物の花が咲いているかのような立体感と華やかさを放ち、展示会場でも多くの来場者が足を止めて見入っていた。

 初めて工芸菓子に挑戦した彼は、「技術顧問の指導のもと、毎日少しずつ形にしていく過程がとても楽しく、奥深さを感じました。川越の魅力を菓子で表現できた事が嬉しい」と語る。

 現地・旭川での展示では、他の工芸菓子作品と並びながらも、川越らしい歴史的背景と若手ならではの感性が融合した作品として、来場者から高い評価を受けた。来場者からは「細部まで丁寧に作られていて感動した」「若い職人の挑戦に心打たれた」といった声が寄せられ、弊社の技術継承と新たな可能性を感じさせる出品となった。

 今後は、さらなる技術向上を目指しながら、地域の文化や季節感を取り入れた一般菓子や工芸菓子の制作にも取り組む予定だという。伝統と革新が交差する和菓子の世界に、新たな風を吹き込む存在として注目される。

 川越菓匠(有)くらづくり本舗・執行役員・製造部長・紺野浩康