各地の菓子店探訪
神奈川県菓子店の投稿

和菓子と洋菓子が「出会う」

創作菓子 精栄軒

贈答用菓子の並ぶ店内

 横須賀市の東部に位置する浦賀。そこはペリー黒船来航の地として有名です。そんな街の一角にある紺屋町バス停。そこには西叶神社があります。この神社のバス停前にある「浦賀の渡し」で向こう岸へ渡ると東叶神社があります。

 この二つの神社をめぐる参拝ルートは「願いが叶う」として有名ですが、西叶神社のある長閑な住宅街の中に「精栄軒」があります。

 「精栄軒」は1910年(明治43年)にこの地に創業されましたが、この1910年という年は近代日本にとっても大きな幕開けの年でもありました。

 日本初の民間主導による本格的な造船所「浦賀船渠株式会社」(浦賀ドック)が本格稼働したのです。それに伴って浦賀の街も住宅地の拡張が進みました。

黒船サブレ

 「精栄軒」創業者の水谷金一さんは、そんな土地柄の風情に合わせ、21世紀の今日まで作り続けられている「黒船サブレ」を発売したのです。創業当時のころ、バターが出回り始めたのに合わせ、伝統的な和菓子を守り続けるより時代に合わせた菓子を考案し、作り上げたのです。黒船の形の中央には蒸気船の推進用外輪が型押しされたサブレ。さくっとした食感、バターの甘さが口の中いっぱいに広がります。ちなみに、小麦粉・卵・バター・砂糖などの配合は今も創業当時と同じだそうです。ショーケースの中で心惹かれるお菓子に横須賀市が企画した「お土産コンテスト」に出品し入賞作品となり、全国推奨菓子に指定された「おりょうと竜馬の愛したかすていら」があります。ネーミングやカステラの味に現在の4代目店主の水谷哲也さんの熱い気持ちが込められています。水谷さんは坂本竜馬が大好きだそうです。コンテストに出品するお菓子を考えていた時、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」を放送していました。そこで、竜馬とおりょうの二人が日本初の新婚旅行に弁当の代わりにカステラを焼いて持って行き、そのレシピが今も残っていると聞き、それを参考に黒糖を使ったカステラを考案したそうです。精製された白糖より体に良いとされる沖縄産の黒糖を使用して、ふっくらと焼き上げています。口に運べば、少しもっちりとした食感。くちどけの良い「かすていら」です。

おりょうと竜馬の愛したかすていら

 ティータイムのお菓子として、緑茶はもちろん珈琲や紅茶にもピッタリです。

 四代目の水谷さんは、これからも代々の店主たちのように新しい材料を取り込みながら浦賀の地に相応しい斬新な創作菓子を作っていきたいと語っていました。

 神奈川県菓子工業組合・事務局職員・今関静子

各地の菓子店探訪のサブカテゴリ一覧

各地の菓子店探訪:神奈川県菓子店の過去投稿一覧