シューアラクレーム 『Choux a la creme』
シュー生地の基本材料、水、油脂、食塩を沸騰させ、その中に小麦粉を加え混ぜ、再び火にかけながら練り上げて、卵を加えて作る。この火にかける工程から、フランス語ではパートシュルルフー(Patesurlefeu)、ドイツ語ではブラントマッセ(Brandmasse)または、ブリューマッセ(Bruhmasse)ともいわれている。シュルルフーというのは火の上にかけるという意味で、ブラントやブリューは焙焼という意味になる。
この生地は、焼成すると内部に大きな空洞ができ、表面にいくつかの亀裂ができる。ちょうどその形がキャベツに似ているところから、シュー(Chouキャベツの意)と呼ばれ、その生地ということでパータシュー(pateachoux)と名付けられた。ドイツ語では他に、空気を吹き込んでふくらませた袋のようなところから、ビントボイテルマッセ(Windbeutelmasse)の名で呼ぶこともある。
材料も水を牛乳、油脂はバター以外にサラダ油、ショートニング、マーガリンに変えることが出来る。出来上がりのシューケースの風味や硬さがそれぞれ変わるので、いろいろと試してみるとおもしろいだろう。
●仕込工程
①鍋に水、バター、食塩を入れ沸騰させる。
②火からおろし、ふるっておいた小麦粉を加え、丁寧に手早く、粉ダマにならないように良く混ぜ合せる。
③再度火にかけ(中火くらい)、生地全体に均一に、尚かつ充分に焦さないように熱をつける。この作業を製菓用語で「火取る」という。
(ポイント1)
火取る作業は、小麦粉中に含まれているデンプン質が配合中の水分を含み、練りながら熱をつけることによって、デンプン質を完全にアルファ化させる。これが第1のポイントになる。今回の分量であれば1~2分間くらい加熱すると良い。
④火から鍋をおろし、良くほぐした卵を数回に分けて加え、その都度良く混合する。生地の硬さを見ながら卵の量を加減する。
(ポイント2)
生地温度を下げないために、加える卵は常温になる程度温めておくと良い。生地温度が下がると、アルファ化したデンプンの粘りが弱くなってしまうため卵が充分に入らなく、ふくらみにも影響する。生地温度を下げないためにも手早く作業をしなければならない。出来上がりの生地温度は40~42度位が望ましい。
⑤出来上がった生地は、口金をセットした絞り袋に入れて鉄板に均等にドーム状に絞る。
●焼成工程
シュー生地をオーブンに入れると、生地に含まれた水分から生地の中心部に、水蒸気が生じ、この水蒸気の圧力でシュー生地が大きく膨らむ。ここで大切なことは、生地の弾力性である。これはアルファ化したデンプン、油脂、グルテンなどが、複雑に作用し合って、弾力性を保っているといわれて、これにより、簡単に切れない、のびのよい膨張が得られる。
①オーブンに入れる前に、霧吹きで水をたっぷり吹き付ける。
(ポイント3)
オーブンに入れた時に、表面の生地が乾燥してしまうと、先に表面が焼固まってしまい、膨らもうとする生地をおさえてしまう。それを防ぐために水をたっぷり吹き付けることが大切になる。それによって、水が熱で蒸気になり、膨らみやすくなる。
②オーブン温度は二〇〇度に設定して安定した状態にしておく。
③はじめに下火の熱で充分に膨らませる。(約15分)その後下火を弱くして、上火で全体に焼色がつくまで焼成する。焼色の状態を見ながら温度調節を行う。
(ポイント4)
生地が膨らんでいる途中では、絶対にオーブンの扉は開けないこと。完全に焼固まっていないと、せっかく膨らんだ生地がしぼんでしまう。
④最後は、ダンパー(排気口)を開けて、庫内に溜まった余分な蒸気を出して乾燥焼きをする。(焼成時間約30~35分)
●配合
A、pate a choux(パータ シュー)
水………………………100g
バター ………………… 70g
薄力粉 ………………… 85g
食塩……………………… 1g
卵……………………… 約3個
B、Creme patissiere(クレームパティシェール)
牛乳……………………500g
グラニュー糖…………100g
卵黄……………………… 5個
薄力粉 ………………… 40g
バニラスティック … 1/2本
バター ………………… 35g
●仕込工程
①牛乳を沸騰直前まで温める。
②卵黄、グラニュー糖、薄力粉を良く合わせる。
③②の中に①を少しずつ入れて混ぜてうらごす。
④再度火にかけ、しっかりと煮上げて氷水で急激に冷やす。
●仕上工程
①シューケースを斜めにカットする。
②クレームパティシェール硬さを調節して①のケースにたっぷり絞り、上面に粉糖を軽くかけ仕上げる。
日本菓子専門学校 阿部悟 氏
洋菓子講習 基礎編より