お菓子のレシピ集
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クグロフ

写真① クーゲルフップフともいい、ヨーロッパ各地においてその綴りはさまざまであり、語源、発祥の地についても諸説あります。その中でも有力なのは、フランスのアルザス地方、オーストリアのウィーンでしょうか。前者は、ブリオッシュのようなリッチな発酵生地を使い、後者はバターケーキ生地を使うのが伝統となっているようです。共通するのは、その形であり、斜めにうねりがあり王冠のような形をしています。その焼型(クグロフ型)の真ん中には火通りを良くするための穴があいています。デザイン性、機能性を兼ね備えた素晴しい型といえます。このお菓子は、オーストリアからフランスのルイ16世のもとに嫁いだマリー・アントワネットがこよなく愛したものとしても有名です。このような背景もさまざまなクグロフ発祥説に関係しているのではないでしょうか。今日では、さまざまなバリエーションがあり、大人も子供も楽しめるお菓子のひとつです。大きさや包装の工夫により、自宅用、ちょっとした御土産、きちんとした贈答商品という使い分けが可能であり、日持ちがよく冷凍保存も出来ます。

 今回はバターケーキタイプのクグロフをオレンジ風味にアレンジしたものをご紹介します。

写真②●配合(直径16㎝クグロフ型・3台分)
バター………………………………380g
グラニュー糖………………………340g
水あめ ……………………………… 25g
全卵…………………………………360g
粉末アーモンド……………………240g
薄力粉………………………………240g
ベーキングパウダー………………… 3g
オレンジピールカット(5㎜)… 200g
グランマルニエ …………………… 35g

●仕込み工程

①柔らかくしたバターとグラニュー糖をすり混ぜる。

②水あめを加える。

③卵を数回に分けて加える。

④あわせて篩っておいた薄力粉とベーキングパウダーをあわせる。

⑤コアントローに漬け込んだオレンジピールをあわせる。

⑥絞り袋を使い、生地を型に流す。

●仕込み工程の注意点

 バターは、十分柔らかくしますが、液状にはしない。液状になったバターは空気を含むことが出来なくなります。バターは固すぎても、空気を含みにくく、また乳化の妨げにもなります。卵を加えた時、上手く混ざらない(分離する)時は、軽く温めます。あるいは、配合中の薄力粉を少量加え、水分を吸収させ分離を抑えます。生地は型の底から絞りいれ、型と生地に隙間が出来ないよう気をつけます。

●焼成工程

 160℃~170℃の温度で時間をかけて焼きあげる。焼成前半、生地が十分浮くまでは上火を抑えます。

●焼成工程の注意点

 最初から上火を強くすると、表面が焼き固まってしまい浮きが悪くなります。あるいは、中からの圧力が集中され表面が割れ平均した浮きになりません。完全に焼きあがってないものを焼成中に動かすと、窯落ちの原因となります。焼成温度が低い場合は、製品の表面に白い斑点ができることがあります。

●仕上げ

粉糖を全体にふる(写真①)。

煮詰めたアプリコットジャムを塗り、乾いたらグラスロワイヤルをかけ、砂糖漬けオレンジスライスで飾る(写真②)。

●バリエーションのヒント

材料の工夫でさまざまなバリエーションが可能です。そのためのヒントを簡単にまとめてみました。これは、一般のバターケーキにも応用できることです。

【油脂】風味ではバターがベストですが、一部をショートニングにかえると口当たりが軽くなります。

【粉】フルーツがたっぷり入る場合は、薄力粉の一部を強力粉にかえることによって底に沈むのを抑えることができます。逆に、薄力粉の一部をコーンスターチにかえると、口当たりは軽くなりますが、フルーツは沈みやすくなります。

【甘味料】水あめや蜂蜜は、生地をしっとりさせ、また長く保つ効果があります。蜂蜜やブラウンシュガーは独特の風味付けに役立ちます。果糖は、生地をしっとりさせるとともに、甘味の強さから、低カロリーに抑えることも出来ます。

【フルーツ】バナナなどの例外を除いて水分の多い生のフルーツは不向きです。

【ドライフルーツ・砂糖漬けフルーツ】レーズンやオレンジピールは代表的ですが、アプリコット・プラム・イチジクなどさまざまなものがあります。乾燥の強いものは、使用前にお湯で戻すか、好みの洋酒に漬け込むとよいでしょう。セミドライフルーツも販売されています。フルーティーな風味を出し、生地の水分を補うのでしっとり感を保ちます。

【ナッツ】アーモンド・へーゼルナッツ・クルミなど、粉にしたものや刻んだものを加えます。香ばしい風味を出し、それぞれの食感が楽しめます。マジパンは、生地をしっとりさせる役目もします。

【チョコレート】溶かしたチョコレート、ココアパウダーとして加えます。刻んだものをそのまま加え、チョコレートの粒を生地中に残すこともあります。

【その他】紅茶、抹茶、シナモンなどの各種香辛料、洋酒など。

日本菓子専門学校高倉美香氏
洋菓子講習 基礎編より

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